研究課題/領域番号 |
23580042
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
片岡 郁雄 香川大学, 農学部, 教授 (60135548)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自生種 / マタタビ属 / Actinidia / 両性 / 自家結実性 / 倍数性変異 / 種間交雑 |
研究概要 |
1.現地調査により,二倍体のシマサルナシが西日本の太平洋沿岸を中心に広く分布しているのに対して,両性・四倍体個体は、九州東部の一部地域にのみ局在しているものとみられた.2.形態的な観察の結果,両性・四倍体個体は,両性花のみを着生し,花弁が白く,開花後大きく外側に反転すること,ガク片が緑色で毛じをもたないこと,果形が長楕円形で果肉色が濃緑色であることなど,通常のシマサルナシ二倍体の雌花や果実とは明瞭に区別される特徴をもつことが明らかとなった.3.両性・四倍体のこれらの形態的特徴を,中国科学院武漢植物園において収集保存している自生種と比較したところ,亜熱帯性の種の変種の中に類似した特性を示すものがあった.4.二倍体シマサルナシの雌花の葯に含まれる花粉は稔性をもたず,人工培地上で発芽は全く認められなかったが,両性・四倍体個体の両性花の花粉は稔性を有し, 50~60%の発芽率を示した.さらに,開花前の花房を被袋して他家花粉を遮断して自家受粉させ,蛍光顕微鏡で観察したところ,雌ずい内で多数の花粉管が正常に伸長し,胚珠に到達していることが確認された.さらに,自家受粉したすべての果実が結実し,正常に発達した種子が形成された.5.チネンシス種キウイフルーツの四倍体の雄および雌品種を用いて,両性・四倍体個体との交雑を行ったところ,双方向の交配組み合わせで結実が認められ,正常な種子が形成されることが明らかとなった. 以上の結果より,自生種に新たに見出した両性・四倍体個体が,マタタビ属では極めて希な機能的な両性花のみを着生する両性個体であることが明らかとなった.また,キウイフルーツとの間に交雑親和性があり,育種素材としての活用の可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である自生種に見出した両性・四倍体個体について,初年度の研究計画に基づいて,1)分布特性を明らかにした.2)遺伝的・分類学的位置付けについては,国内近縁種および亜熱帯に分布する種との比較において,形態学的特性を明らかにできたこと,3)自家受粉による結実および自家受粉後の花粉管伸長の観察により,自家結実特性を有することを確認できたこと,4)チネンシス種四倍体品種キウイフルーツとの種間交雑が可能であることを明らかにし,各項目について,期待される成果が得られた.また得成果を園芸学会にて発表した.以上を総合しておおむね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた成果を踏まえつつ,当初計画に基づいて「分類学的位置付けの検討」,「生態的特性」,「果実成分の評価」等の項目について研究を推進する.国内外の形態的特性が類似する近縁種との比較を現地および研究圃場において詳細に実施する.また,低温要求性や環境適応性などの生態的特性を調査する.さらに果実成分の評価を行う.前年度に獲得したキウイフルーツとの種間雑種実生の初期生育について調査を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の研究費の使用計画において,物品費(消耗品費)および旅費(国内現地調査,研究成果旅費)について,運営費等別途経費からの充当が可能であったことから,一部を留保し次年度に請求する研究費と合わせ以下のとおり使用する計画である.総額1,680千円物品費1,330千円:内訳(設備備品 550千円(酸度計 東亜DKK TA-70)消耗品780千円 (HPLC用カラム250千円,試薬類280千円,分析器具類100千円,組織観察用器具類50千円,圃場用資材100千円),旅費300千円:内訳(国内旅費 150千円(現地調査,成果発表)外国旅費 150千円(現地調査・中国),謝金等 0千円,その他50千円:内訳(50千円 論文投稿料)
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