研究課題/領域番号 |
23580042
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
片岡 郁雄 香川大学, 農学部, 教授 (60135548)
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キーワード | 自生種 / マタタビ属 / Actinidia / 両性 / 自家結実 / 倍数性変異 / 種間交雑 / 中国 |
研究概要 |
1.生態的特性について,両性・四倍体6系統の発芽期はいずれも3月中旬で,開花期は5月下旬で,二倍体シマサルナシと同時期であった.果実成熟期は11月下旬から12月上旬と二倍体シマサルナシに比べ7~10日遅かった. 2.果実形質については,二倍体シマサルナシは楕円形または円形であったのに対して,両性・四倍体系統は長楕円形で明らかに区別できた.果実重は,5g前後で,二倍体シマサルナシに比べ小型であった.可溶性固形物含量は15.7~18.9%,滴定酸含量は1.1~1.6%であった.果皮は二倍体シマサルナシと同様褐色無毛であったが,果肉は濃緑色で二倍体シマサルナシに比べクロロフィル含量が高かった.アスコルビン酸含量は7.4~12.1mg/100gFWで二倍体シマサルナシに比べ少なかった.プロテアーゼ活性は,0.1~1.5nmol pNA released/minで,二倍体シマサルナシと同様に著しく低かった. 3.収集保存した6系統について両性形質を再検証したところ,いずれの個体も,着生した花は全て形態的な両性花であり,平均60%以上の高い花粉稔性を有し自家結実することが確認された.一方,形態的な特徴から類縁性の高いと思われたA. callosa var. discolorについて,中国武漢植物園と連携して,雌株の形態的な両性花について調査したところ,花粉稔性は全く認められなかった. 4.両性・四倍体個体と四倍体チネンシス種キウイフルーツ2品種との間で,双方向の交雑により獲得した種子を播種したところ,65~92%の高い発芽率を示し,実生は正常に生育した. 5.以上の結果から,両性・四倍体の各種形質が明らかとなり,キウイフルーツ育種への活用の可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に得られた結果を踏まえ,当初計画にしたがって,両性・四倍体自生種について,発芽,開花,果実成熟期などの生態的特性を明らかにできたこと,可溶性固形物含量,滴定酸含量,クロロフィル含量,アスコルビン酸含量,プロテアーゼ活性等の果実成分を評価できたこと,両性・四倍体自生種と形態的な類縁性が示唆された亜熱帯自生種には花粉稔性や自家結実性がないことが明らかにできたこと,四倍体チネンシス種キウイフルーツ2品種との双方向の交雑により得られた種子が高い発芽率を有し,多数の実生が得られることを明らかにできたこと等の成果が得られたことから,概ね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づき,両性・四倍体の「生態的特性」に関して,栄養繁殖特性,耐暑性,休眠性と低温要求性などを明らかにする.また,「チネンシス種キウイフルーツとの交雑個体の形質評価」については,前年度に得られた交雑実生個体の形態,生態的特性の調査を行う.また,最終年度に当たり,研究期間を通じて得られた知見をもとに両性・四倍体個体群の形質について総合的な評価のとりまとめを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の使用計画において,果実特性評価に使用する機器の改造のため,その他経費として支出した.一方調査研究旅費は運営費等別途経費からの充当が可能であったことから,一部を留保し,次年度に請求する研究費として合わせて,以下のとおり使用する計画である.試薬類,実験器具類,圃場用資材,現地調査旅費,成果発表旅費に充てる予定である. 総額980千円(前年度残額180千円,次年度請求額800千円) 内訳:物品費700千円(試薬類,実験器具類,圃場用資材),旅費200千円(現地調査,成果発表),その他80千円(論文投稿料)
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