1. 生態的特性を把握するため,7.2℃以下の自然低温遭遇350時間での20℃における切枝の発芽率を調査したところ,シマサルナシ2系統は処理開始3週間後には90%以上が発芽し,両性・四倍体2系統の発芽はやや遅れたが,5週間後には90%前後に達した.6月下旬に緑枝挿しを行ったところ,発根促進剤の2000ppmインドール酪酸50%エタノール溶液処理の有無にかかわらず,すべて発根した. 2. 果実成熟特性について,樹上において,果実硬度は11月下旬まで高く保たれたが,12月上旬には低下がみられ,12月下旬には著しく軟化した.これにともなって,可溶性固形物含量は上昇したが,滴定酸含量は1.8~2.1%と高く維持された.果実追熟特性について,収穫後の17℃に保持した場合,対照区の果実硬度は25日目まで緩やかに低下したが,エチレン処理区の果実は5日までに著しく軟化した.可溶性固形物含量はエチレン処理により対照区と比べ速やかに上昇した.また対照区では滴定酸含量は収穫後25日まで高く維持されたがエチレン処理によりわずかに低下した.エチレン処理果実では,色彩計測定において,L値がやや低下し,a値が上昇し,b値が大きく低下し,果肉色は緑色から暗緑色に変化した.対照区の果実は,収穫25日後までエチレンを発生しなかったが,エチレン処理区の果実は,収穫6日後からエチレンを発生するものがあった. 3.両性個体と交雑実生の成葉の葉身の形は四倍体自生個体に類似し,葉身の色はA. chinensisよりも淡い緑色であり,また葉身の毛じの状態は両親の中間的であった. 研究期間を通じて,両性・四倍体個体が,マタタビ属では極めて希な機能的な両性花のみを着生する両性個体であること示された.また,キウイフルーツとの間に高い交雑親和性があることから,自家結実性導入の育種素材としての活用の可能性が示された.
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