研究課題/領域番号 |
23580043
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
望岡 亮介 香川大学, 農学部, 教授 (20221624)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブドウ栽培 / リュウキュウガネブ / 野生ブドウ / 着色 / 香大農R-1 / 沖縄 / 亜熱帯地域 |
研究概要 |
亜熱帯地域は、果実着色期の高温による着色障害、冬季の低温不足による春季の萌芽・開花の不揃い等で、ブドウ栽培不適地とされる。沖縄地域に自生する野生ブドウ・リュウキュウガネブの形質を導入したブドウ品種なら亜熱帯地域でも経済栽培が可能ではないかと考え、本野生種の交雑種‘香大農R-1’を沖縄に定植し、定期的に生育調査を行った。2011年度は5月から複数回沖縄に台風が襲来し、新梢へのダメージが大きく、その後の生育に支障をきたした。加えて、定植した圃場の土壌が重粘土質であったため、排水性が悪く、生育阻害が著しかった。秋季、株元に盛り土をして排水改善をし、樹勢回復を図った。沖縄では新梢の先端で着葉し樹全体が落葉することはなかったが、11月を過ぎたあたりで新梢伸長は見られなくなった。しかし、樹勢がかなり弱っていたことが影響している可能性もあるので、引き続き生育調査をする必要があると思われた。 ブドウ栽培では、フィロキセラ抵抗性台木に接ぎ木した苗木を用いるのが一般であり、接ぎ木用の器械もいくつか開発されている。器械接ぎでは短時間で大量の接ぎ木苗が得られるが、活着率が低いことが問題とされている。器械接ぎした苗は湿らせたオガクズ等に全体を埋めて加温し、カルス発生を促しつつ萌芽、発根させるのが一般的な方法であるため、活着用の設備が必要となる。そこで、接ぎ木した苗を圃場に挿し木して、接ぎ木部をアルミ箔や黒マルチを貼った筒で覆い、筒内部に土を充填して活着を調べた。活着率はいずれの区も低かったが、アルミ箔を貼った筒で活着が見られた。筒に充填した土がやや粘土質の畑土であったので、通気、排水性の良い土を用いて調査する必要がある。 4倍体育成の前段階としてリュウキュウガネブの雄株を茎頂培養したところ、オーキシンに2,4-Dを用いるとわずかに生長が見られたが、その他の条件では褐変枯死し、培養が困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
沖縄での‘香大農R-1’ブドウの生育調査については、台風等による生育障害で、十分なデータが得られなかった。達成度50%。 器械接ぎによる接ぎ木活着向上については、活着率向上の可能性が得られたことから、達成度70%。 4倍体作出のための培養条件については、リュウキュウガネブ雄株の茎頂培養が困難であることを見出した。ブドウの雌雄性で茎頂培養の困難さに違いがでることは今まで報告がなく、初めての発見であった。茎頂培養条件にある程度方向性が見出されたことから、達成度70%。 以上のことをまとめると、全体の達成度は60%。
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今後の研究の推進方策 |
沖縄でのブドウ栽培の可能性を検討するため、リュウキュウガネブの後代である‘香大農R-1’(リュウキュウガネブבマスカット・オブ・アレキサンドリア’)に加えて、香大農R-2(‘香大農R-1’בベーリー・アリカントA’)の生育調査を行い、香川県での生育と比較する。両品種は高温でも果皮の着色が良好である上に芽の休眠は浅いことが認められており、温暖な瀬戸内海性気候の香川での生育は、ある程度沖縄での栽培の参考になると考えている。また、沖縄の土壌は有機物が少なく重粘土質のものが多いため、通気性や排水性の改善を第一に管理する。 大きな果実の品種と小さな果実の品種を交配した場合、後代の果実はその中間よりも小さな果実になる一方、果実の形質は母系の形質が影響するとの指摘もあることから、リュウキュウガネブを育種親として新たな4倍体ブドウを作る場合、雄株の4倍体化が重要となってくる。効率的な4倍体化獲得には試験管内倍加が有力な手段であるので、雄株の茎頂培養法の確立を進める。 芽の自発休眠が浅いブドウ品種の繁殖法として、どの時期でも接ぎ木や挿し木は可能であると考えられるが、ある程度硬化しないと新梢は萎凋するので、未硬化時の挿し木活着率を向上させる方法の確立を急ぐ。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、沖縄県名護市に定植してある‘香大農R-1’樹の生育調査を行うための旅費に用いる。接ぎ木や挿し木の繁殖に関しては、挿し木用バット、接ぎ木テープ、活着率を向上させるための試薬等の消耗品に用いる。その他、培養、果実の品質調査等に用いる試薬、定植してあるブドウ樹の管理に用いる農薬、肥料、園芸資材に用いる。
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