研究課題/領域番号 |
23580043
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
望岡 亮介 香川大学, 農学部, 教授 (20221624)
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キーワード | 資源植物 / 亜熱帯 / 野生ブドウ / リュウキュウガネブ |
研究概要 |
亜熱帯でも栽培容易なブドウ品種育種のため、沖縄地方自生種リュウキュウガネブを、4倍体品種と交雑するため試験管内倍加の条件を検討した。初代培地をナフタレン酢酸(NAA)とベンジルアデニン(BA)添加1/2MS液体培地とし、茎頂培養を行った場合、雌株は生育したが、雄株では茎頂の生育は見られなかった。他の数種類の雄株(野生種または台木品種)では上記の条件で茎頂培養が可能であったため、雄株全般が茎頂培養困難であるわけではなかった。そこで、NAAに代えて、よりオーキシン活性の高い2,4-Dを用い、活性炭を添加して、さらに培養初期に暗黒条件にすると雄株の茎頂は生育した。寒天培地に継代したところ、褐変し、誠意が停止したため、継代培地条件については現在検討中である。 沖縄での‘香大農R-1’(片親が野生種リュウキュウガネブ)の生育調査を行ったところ、台風被害もあったが、11月頃から新梢伸長の停滞が見られた。12月~2月頃は完全ではないが落葉も見られ、休眠に誘導されているように見られた。一般の落葉果樹を熱帯・亜熱帯地域で栽培すると、低温不足で萌芽の遅延・不揃い、開花のばらつきが生じるが、本品種は3月以降、気温の上昇に伴い、正常に萌芽・生育したため、沖縄での栽培には特に問題は認められず、沖縄での栽培の可能性をうかがわせた。 沖縄での試験栽培地の植え付け土壌はかなりの重粘土質であることから、盛り土、高畝栽培による排水対策は重要であった。また、敷き草を徹底することにより、土壌の物理性は改善された。香川で行った葉果比の実験では、ベレーゾン期以降であれば1房につき2枚以上の葉があると果実品質の低下は見られないことが分かった。 2012年は夏期に大型台風が続けて沖縄を来襲したため、果実の着生、成熟に関してのデータをとることができず、また、半数近くの苗木が台風被害により枯死したため、補植が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄現地の試験栽培園は数年ぶりの大型台風の直撃を連続で受け、多くの株が枯死したり生育遅延が起こったが、香川で行っている実験では、それまで培養ができなかったリュウキュウガネブ雄株の培養条件が判明し、初めて茎頂培養に成功した。順化はまだ成功していないが、今後、効率的な試験管内増殖およびその手法を利用した試験管内倍加の可能性が示唆された。達成度90%。 ‘香大農R-1’の栽培条件で、ベレーゾン期開始直前であれば葉果比はそれほど大きく なくても果実品質の低下は見られなかったため、病害虫防除のために積極的な摘心が行えることがわかった。沖縄での生育において完全落葉しなくても、生育遅延は発生しないことが確認された。果皮の着色については、いまだ沖縄での着果は見られていないが、夏季の最高気温が沖縄よりも高い香川で着色障害は発生しないので、沖縄でも着色不良の問題は生じないものと考えられる。果実成熟に対する達成度90%。 以上の点をまとめると、達成度90%。
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今後の研究の推進方策 |
リュウキュウガネブ雄株の4倍体化に関する培養条件(生育培養条件)を検討し、試験管内増殖を図って、コルヒチン処理による倍加を行う。 沖縄での実証栽培については、排水対策を兼ねた土づくりの方向性が見えてきたので、栽培条件、特に台風に対する仕立て方などの実証を行う。また、新梢の充実と結実促進を目的として、摘心の効果を検討する。 器械接ぎの活着改善については、挿し床の排水性改善、保温効果、静菌効果を期待して、挿し床への炭の添加効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、研究費は沖縄県名護市での実証捕の‘香大農R-1’の生育調査を定期的に行うための旅費に主に当てる。接ぎ木や挿し木の繁殖に関しては、挿し木用バット、接ぎ木テープ、活着率を向上させるための試薬等の消耗品に用いる。その他、培養、果実の品質調査等に用いる試薬、定植してあるブドウ樹の管理に用いる農薬、肥料、園芸資材に用いる。さらに、香川での生育調査、培養、接ぎ木を含めた繁殖方法の検討のため、消耗品として使用する。また、明らかになった実験結果を学会発表するための旅費として使用し、実験結果をまとめて学術雑誌に投稿するための投稿費用に当てる。
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