研究課題/領域番号 |
23580044
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
尾形 凡生 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (10177115)
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キーワード | 中山間地 / 果樹園芸 / キウイフルーツ / 傾斜地 / エチレン / 新梢成長 |
研究概要 |
中山間地のみが持ち得る地勢的資源として、山間の急傾斜を果樹栽培に活用するという発想から、キウイフルーツを傾斜に沿って上方に斜立させて栽培する樹形を考案し、枝の伸長部が常に樹体上位に位置することが樹の成長に及ぼす影響を大学附属農場の試験圃場、および高知県大豊町の実際の棚田跡地斜面に設営した園地で調査している。 キウイフルーツ樹の先端より萌出する新梢は、上方に向けた斜立支柱に誘引紐、針金等で結んだ場合、生育期当初の伸長は水平誘引の場合に比べて良化する。キウイの新梢は、らせん状に支持物に巻き付きながら自らを固定しつつ伸長するが、新梢がこのらせん運動をともなう伸長で支柱を捕捉できなかった場合、速やかに形態を変えて、新梢自体が細い巻きひげ状となる。巻きひげ状新梢先端は、より捕捉能力が増すので支柱を捉えやすくなるが、一旦、巻きひげ化した新梢は当初のらせん運動しながら急速伸長する状態には戻らない。この形態変化は、先端部で発生するエチレンに依存していることが、エチレン生合成阻害剤等を用いた解析で前年度に判明しているが、24年度は薬剤濃度を変えた処理を加えて確認し、この仮説をより確実なものにできた。また、支柱自体がらせん状の形態をしている園芸用支持資材を用いて、新梢をその中を通すことにより、旺盛な伸長をより長く継続できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キウイフルーツの新梢を上方に誘引した場合、その伸長が当初旺盛になるものの、新梢自身によるらせん運動によって支持物が捕捉できない場合、新梢の成長様式が一変して、より捕捉のみに特化した形態となることは当初の予測にないことであった。よって、当初の計画である最終年度の1年前にある程度樹形を完成させるまでには至っていないが、本研究では、新知見としてこの成長様式の転換が植物ホルモンであるエチレンの介在するものであることを明らかにしてその対策を講じながら新樹形の構築・評価を行いつつあるので、実施方法に問題のある計画の遅れではない。25年度には実際の圃場で試験中の斜立樹形が完成に至る予定であり、果実や生産量に関わるデータも25年度より取得できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2か所の試験地に設置している斜立棚は、いずれも着果重量を考えない幼木期限定の簡易なものであるので、最終年度にあたってはこれを増設・強化して、果実重量の負荷に耐えられるものにし、また、24年度に活用の目途の立った新梢先端部の伸長誘導支柱を設置して、本来の計画である急傾斜地の斜立棚の最終モデルを示す。また、伸長誘導支柱については、より効率的な形態を探索する。 エチレンの介在する新梢伸長動態の変化については、本研究で解明された新しい知見であるので、新梢の支持物への接触や、支持物を捕捉できないままどの程度風に揺らされれば形態変化につながるような成長の転換が起こるのかを、組織からのエチレン生合成量の計測によって具体的に把握する。 成果の公表については、夏季の園芸学会中四国支部会大会、および園芸学会秋季大会にておこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費で斜立棚の建設資材を購入し、これを増設・強化して、果実重量の負荷に耐える急傾斜地の斜立棚の最終形を示す。 新梢伸長誘導支柱の効率的形態の探索については、既存園芸資材の転用および自作によって行うので、消耗品費の範疇内で対応できる。 成長様式の転換を左右すると考えられる内生エチレンについては、すでにガスクロマトグラフィー装置一式を購入しているので、消耗品の補充のみでエチレン量の計測が可能な状況であり、この分析を多点数実施する。 成果の公表を夏季の園芸学会中四国支部会大会、および園芸学会秋季大会にておこなうので、それらへの参加旅費を本科研費より支出する。
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