研究課題/領域番号 |
23580044
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
尾形 凡生 高知大学, 自然科学系, 教授 (10177115)
|
キーワード | キウイフルーツ / つる性果樹 / 傾斜地 / 整枝 / 剪定 / 中山間地 |
研究概要 |
平棚栽培と斜面地の傾斜棚におけるキウイフルーツの新梢生育の違いを調査し、生理学的な裏付けを試みた。 平棚に水平誘引した樹の新梢に比べ、斜立した支柱に誘引して先端を上向させた新梢では成長量が大きくなった。水平区と斜立区間で年間の総伸長量には差がなかったが、斜立区では突発枝の発生が抑えられたため、主新梢の伸長量が、水平区の16.2%から斜立区の27.2%に増加した。水平誘引区では、誘引を行わないと新梢が伸長方向を見失い、その場で自分自身に巻きつきながら蛇行する現象が多発した。 キウイフルーツ新梢に、エチレン発生剤であるエスレル、およびエチレン生合成抑制剤であるアミノエトキシビニルグリシン(AVG)を散布したとき、エスレル区では有意な伸長抑制効果が見られ、反対にAVG区では促進効果が得られた。AVGは新梢伸長量を増加させるとともに突発枝の発生数を抑制した。しかしながら、エスレル区では、水平誘引時に新梢先端に生じたような蛇行状の伸長は生じなかった。直進的に伸長する新梢と蛇行伸長をしている新梢からのエチレン発生量は蛇行枝が10倍以上大きく、内生エチレン発生量と伸長様式の関係が示唆された。また、蛇行枝は直伸枝に比べ成長が遅く葉の展開も遅いため表面積が小さい傾向が見られた。 以上の結果から、キウイフルーツ新梢の伸長成長には、エチレンが少なからず関わっており、整枝方法の工夫や人工的な手法によりエチレンを抑制し、本来成長すべき新梢の伸長成長を促進することにより、負け枝現象の軽減や突発枝の抑制効果があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キウイフルーツ新梢へのエスレル処理によって伸長抑制が生じ、エチレン生合成阻害剤であるアミノエトキシグリシン(AVG)処理で伸長促進が起こることを再度確認した。新梢伸長が促進されたとき、突発枝の発生数が顕著に抑えられた。勢いよく伸びる新梢と、蛇行状の伸長が始まった新梢のエチレン発生量は、蛇行枝が直伸枝に比べ明らかに多かった。 新梢を斜立誘引すると水平誘引に比べて成長が促進され、突発枝の発生が抑えられた。一方、水平誘引区では走性を見失い蛇行状成長に移行する現象が観察された。すなわち、前年報告書において本年度の目標のひとつに定めたエチレン生成を引き起こさせない管理法は、基本的には主梢先端を常に上方向に保つことであり、これは斜立栽培の基本構造とも合致する。 以上、当年度の試験によって、水平棚で栽培した場合に、主梢先端が弱勢化し、かつ基部から強い側枝が萌発して樹形が乱れやすいキウイフルーツの挙動が、内生エチレン生成によって制御されているとの仮説をおおむね説明付けることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
キウイフルーツの主梢を上方向に誘引する場合、主梢が支柱・支線に絡みついてそれらを巻き込みながら肥大することを避けるため、紐状で毎年張り替えることを前提とした支持線への誘引方法を検討中であるが、これは、表面に凹凸の多い麻紐を用いて紐を常時枝条に巻き付けながら先端を上方向に誘導することにより一定の効果が得られる。但し、作業が煩雑になることは否めず、本年度の試験によって資材の形状や巻き付け方をさらに工夫する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度は、樹体からのエチレン計測等、生理学的な裏付け試験への集中が必要であり、実証試験地における斜立棚の拡張・補強工事分を本年度に繰り越した。 実証試験地で斜立棚の拡張・補強工事を行い、長期の栽培に耐える支持構造物を完成させ、斜立栽培のモデル樹園とする。
|