本試験は、キウイフルーツの樹形管理の1方法として、斜面地を用いた斜立栽培を提案するものである。つる性木本植物であるキウイフルーツは、構造枝(主枝・亜主枝)の伸長が衰えやすく、基部から2次枝が多発して樹形を著しく乱すが、斜立栽培により、本樹種特有の成長現象をできる限り抑えて、樹の早期拡大と樹形の乱れの回避するできることを立証しようとした。 キウイフルーツの新梢は、萌発当初、旺盛かつ直進性の伸長をみせ、その後、葉の著しい小型化や茎の細化、先端の巻き付き運動など、生育相が一気に転換する。前年度の結果に示すように、この生育相の転換にはエチレンが関与していることが明らかで、エチレン生合成阻害剤の処理により、直進性を維持させて巻き付き運動への相転換を阻害することができる。しかし、本年度の試験では、一旦、巻き付き運動を始めた新梢は、その後エチレン生合成阻害処理や基部からの徒長枝除去を施しても、直進成長を回復させることはできず、よって、構造枝の伸長確保のためには、エチレン性の伸長反応を起こさせないことが肝心となる。 斜立棚に新梢先端を上方に向けて誘引することにより、水平棚に比べて、その伸長を長く維持できた。しかし、棚面の傾斜角度が20度程度と緩い場合は、新梢基部からの成長旺盛な2次枝の発生と、その発生とほぼ同時に起こる新梢先端の巻き付き運動の回避が難しかった。45度程度の大きな傾斜角を支柱等の設置により新梢に与えた場合は、旺盛な成長が長く続くが、新梢が風に揺らされる状態が生じた途端に、エチレン性の巻き付き運動が誘発され伸長できなくなる。急速伸長時にも新梢は支柱や支線など施設構造物にゆるやかに巻き付きながら伸長するが、構造物が枝に巻き込まれて喰い込む危険がある。この解決には、ある程度の強度を持ちながら必要に応じて張り替えの可能な紐状の支線を使って新梢を支持することが有効であった。
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