研究課題/領域番号 |
23580046
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
一色 司郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (40253588)
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キーワード | ナス / 雄性不稔 |
研究概要 |
応募者はこれまで、戻し交雑核置換法によるナスの細胞質置換を行ってきた結果、Solanum anguivi、S. kurzii、S. violaceum、S.virginianum、S. aethiopicumおよびS. grandifoliumの各細胞質をもつ細胞質置換系統の育成に成功し、これらがすべてCMSを示すことを明らかにした.本研究では、これらの示す雄性不稔性の詳細について明らかにする。 昨年度までの研究から、S. kurzii、S. violaceum、S. virginianumの細胞質をもつナス細胞質置換系統は、葯内に花粉を形成するものの、開花時に全く葯を開かない葯裂開不全型の雄性不稔性を示すこと及びS. anguivi、S. aethiopicumおよびS. grandifoliumの細胞質をもつナス細胞質置換系統は、葯内において花粉が全くできないという花粉形成不全型の雄性不稔性を示すことが明らかにした。 本年度は、ナス属野生種S. virginianum、S. kurzii、S. violaceum、S. anguivi、S. aethiopicumおよびS. grandifoliumを各細胞質親として,連続戻し交雑で作出した1)機能的雄性不稔を示すMS(Svir)、MS(Skur)およびMS(Svio)、ならびに、2)細胞質・核遺伝子型雄性不稔の雄性可稔系統MF(Sang)、MF(Saet)およびMF(Sgra)を供試材料とし、花粉のアセトカーミン染色性、ルゴール液染色性および人工培地での発芽をそれぞれ開花2日前、当日および2日後に調査した。その結果、MSおよびMF系統がナスより花粉の稔性が低かった直接的な原因として、花粉のデンプンの蓄積量がナスより少なかったこと、ならびに、その後のデンプンの分解の進行がナスより劣ったことが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Solanum anguivi、S. kurzii、S. violaceum、S. virginianum、S. aethiopicumおよびS. grandifoliumの各細胞質をもつナス細胞質置換系統が、葯裂開不全型および花粉形成不全型のいずれかの雄性不稔性を示すことを明らかにした。さらに、花粉の稔性を詳細の明らかしていることが大きく評価できる点である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、花粉稔性に加えて種子稔性について詳しく調べる予定である。これによって、各CMSの発現の程度・様相を明らかにする。さらに、季節変化に対するCMSの発現の変化の有無についても明らかにする。 また、オルガネラの両性遺伝現象の解析も明らかにする予定である。各CMS系統を育成する際の各世代の実生について、細胞質DNA(葉緑体及びミトコンドリアDNA)を詳細に分析することでオルガネラの両性遺伝現象の様相を解明し、交雑による細胞質改変への応用の可能性を探る。 一方、CMS系統識別法の開発も行う。CMS 系統が実用化された際の権利保護のために、葉緑体及びミトコンドリアのDNAマーカーによる各CMS 系統を同定できる識別法の開発を行う。 さらに、葯培養による雄性不稔系統の純系化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに引き続いて、平成23年度に本研究費で導入したNano drop 2000を活用してDNAを定量し、効率よくDNAを分析する。特に、オルガネラの両性遺伝現象の解析を明らかにする予定である。実際には、葉緑体及びミトコンドリアDNAを詳細に分析する。 また、栽培して諸特性を調査するために圃場の整備およびガラス温室の整備を行う。特に、アセトカーミンなどの試薬で花粉稔性を調査する。 さらに、葯培養による雄性不稔系統の純系化を行う。
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