研究概要 |
チューリップ属品種および園芸品種について、系統学的あるいは遺伝学的な根拠から分類することは不可能とされ、人為分類に留まっている。本研究は、花弁の色素分布と品種成立の情報から系統的位置関係を把握し、また、交配雑種後代の色素生合成遺伝の情報を踏まえ、色素化学的な分類によるチューリップ属品種の成立を明らかにする。そのため、化学分類の指標として重要な主要アントシアニン色素14種類の化学構造を決定する必要がある。また、国内で販売されている約200 系統の園芸品種に加えて、富山県と新潟県で育成・保存されている品種並びに原種について、高速液体クロマトグラフ法により定性・定量分析を行う。クラスター分析の結果から樹形図を作成し、チューリップの系統的位置関係を解析する。最終的にチューリップ品種の成立を明らかにし、それらの系統的分類法の構築を試みる。1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:アントシアニンの分析法は、Li, J.-B., 他. Phytochemistry, 69,3166-3171, 2008の方法で行った。チューリップ花弁の重量を秤量し、抽出溶媒(酢酸-メタノールの1:1 混液)で浸積後、抽出溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定性・定量分析した。2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:チューリップ品種を栽培し、相当量の花弁を材料として確保した。3. 未知色素を含む14 種類のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:花弁材料を用いてアントシアニンを単離するための分画を調整した。4. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:Li, J.-H., 他. Phytochemistry, 71, 1342-1349,2010に記載のSAS 統計ソフトを用いたクラスター分析を行った。
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