研究課題
本研究は、チューリップ品種並びに園芸品種の花弁の色素分布と品種成立の情報から系統的位置関係を把握し、また、交配雑種後代の色素生合成遺伝の情報を踏まえ、色素化学的な分類による品種の成立を明らかにし、それらの系統的分類法の構築を試みることを目的とする。まず花弁色素の分析の結果、①Pg3R、②Pg3R2”A、③Cy3R、④Cy3R2”A、⑤Dp3R、⑥Dp2”A、⑦Dp3R3”Aの7種の主要色素を同定した。これらをマーカーとして415品種のクラスター解析を行い、PgとCyを主体とする311品種(A群)とDpを主体とする104品種(B群)の二グループに大別された。A群はさらに、アセチル基を少なく保有する群(151品種)、PgとCyが共存し2”位のアセチル化(2”A)が比較的進んだ品種群(107品種)並びにPgを優性型として2”A(2”アセチル化)が特に強い品種群(53品種)の3者に分別された。B群はDpを優性色素とする品種群であって大きく2つのサブクラスターに分離し、チューリップの原種とされる品種が多く見出され、従って野生種はDp優性型であったと判断され、加えて、強いアセチル化活性を有していた。また、相関性から系統分化がエステル結合が外れる方に向かうものと考察された。A群の小サブクラスターにおいてPg優性型品種群の2”Aが過度に強固であることを考慮すると、チューリップの系統分化の方向性としてはDp→Pg→Cyであると考えられ、Cyを主体とし2”Aの活性がほとんどないものが最劣性の品種と推察された。最も特徴的なことは、Pg、Cy、Dpの3者が共存する傾向にあり、それらの占有率の遺伝形質については、不完全優性的であると推定された。以上の結果から園芸品種について、系統群はDpを主体とした紫色系統の野生種から分化したと考えられ、続いて劣性型のPgまたはCyを比較的多く含む赤色花並びにアシアニック系の白色花が出現し、今日あるチューリップ品種群が成立したものと結論した。
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