研究課題/領域番号 |
23580049
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
増田 昇 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00181652)
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研究分担者 |
下村 泰彦 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50179016)
加我 宏之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00326282)
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キーワード | 緑地計画 / 公園計画 / 居住環境整備 / ニュータウン再生 |
研究概要 |
わが国の大規模ニュータウンでは、少子・高齢化の急速な進展や施設の老朽化など構造的な変化によるマイナス面を抑制し、優れた資源を活用することによって持続的な発展方策を示すことが喫緊の課題となっている。本研究では泉北ニュータウンを対象として、公園緑地系統を中心としたニュータウンに造成されてきた緑地の変化とともにニュータウン居住者のライフスタイルの変化から捉えた新たな屋外ニーズを明らかにし、公園緑地系統の再編の方向性と市民参画型の管理運営の新たな仕組みを探ることを目的としている。 当該年度では、泉ヶ丘地区を対象に建設後約40年が経過した現在の樹林地の連続性を評価し、樹林地の連続性がどのような地形構造、土地利用において保有されているかを探った。結果、尾根筋から連続する斜面部に位置する公園緑地において空間的な連続性を保有し、公園緑地を骨格として集合住宅地や商業施設、教育施設内の樹林地が住区及び地区内の樹林地の連続性を補完していることを明らかにし、建設時の公園緑地系統の計画目標が達成され、成熟期を迎えるニュータウンの貴重な資産となっていることを検証した。さらに、高齢居住者を対象としたアンケート調査を通じて、日常生活行動における公園への利用経路及びコミュニケーション行動を分析した。結果、高齢居住者の公園利用の促進に際して、公園へのアクセシビリティが影響していることを明らかにし、多くの高齢者の公園までの最短経路は公園及び緑道に集積し、歩車分離によって公園をつなぐニュータウンの緑道システムは、高齢者の利用を促進する上で現在でも有意義なものとなっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニュータウン内に保有された公園緑地系統を中心に造成されてきた現況の樹林地について、自然環境要素の連続性を評価するための指標:CON値を用いて評価した結果、成熟期を迎えるニュータウンにおいて建設当初に掲げられた計画目標が達成され、ニュータウンの持続的発展方策を探る上で樹林地が物的環境要素として基盤となり、樹林地の連続性は、尾根部から斜面部に至る公園緑地系統が骨格となるといった立地条件からみた公園緑地系統の重要性を明確化しつつある。さらに、高齢者の日常生活行動における公園へのアクセシビリティ、コミュニケーション行動における公園や緑道等の公園緑地系統に対する居住者ニーズを明確化するなど研究成果を得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
過年度のテーマ型コミュニティを対象とした公園緑地の利用意向、公園緑地系統の新たな管理主体としてのテーマ型コミュニティの可能性の調査結果、さらに、成熟期のニュータウンにおいて増加しつつある高齢居者を対象とした屋外空間に対するニーズの把握、ニュータウン内に造成されてきた樹林地を骨格とする緑地の連続性評価結果を通じて、最終年度では、過年度の研究成果を踏まえて、公園緑地系統の再編の方向性を探る。また、従来、各事業主体や基礎自治体が主に公園緑地系統の管理を担ってきたが、指定管理者制度やコミュニティビジネス化など新たな市民参画型の管理運営の仕組みが都市公園等で導入されつつある。本年度は、都市公園等で試みつつある新たな市民参画型の管理運営の実態を事例調査を通じて把握することで、ニュータウンの持続的発展に資する市民参画型の新たな公園緑地系統の管理運営の仕組みを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
過年度の研究成果の検証を通じて、テーマ型コミュニティ、高齢居住者を対象としたアンケート調査、ヒアリング調査の補足調査を実施し、この補足調査に研究費を充てるとともに、都市公園等での新たな市民参画型の管理運営の実態調査に研究費を充てる予定にしている。また、補足調査を通じた研究成果を精査することで学会等での研究発表を予定しており、論文投稿等に必要な経費を支出するとともに、最終年度の取りまとめに経費の執行を予定している。
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