研究課題/領域番号 |
23580053
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
津呂 正人 名城大学, 農学部, 准教授 (40410774)
|
研究分担者 |
南山 泰宏 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (00463266)
|
キーワード | ラベンダー / 精油 / モノテルペン / SSR / 香り |
研究概要 |
本年度は作成したSSRマーカーの有効性の検証ならびにリモネン合成酵素遺伝子導入個体の精油生産性評価を行った. (SSRマーカーについて) Lavandula angustifolia,L.×intermedia,L. stoechas,L. heterophyllaおよびL. lanataの5種15品種を用いて23年度に構築した51種類のSSRマーカーの多型解析を行った.51のうち42マーカーでPCR増幅産物が認められたが,塩基配列情報から推定されたサイズの産物が得られたものは10マーカーのみであった.これらの10のうち9マーカーにおいて,L. angustifoliaの9品種内に多型を確認し,残る1マーカーも種間において多型が得られた.また,連鎖地図作成のためのF1集団を作成するため,L. angustifoliaの‘濃紫2号’,‘エレガンス・アイス’および‘アロマティコ’を用いて種内交配を行い,35粒のF1種子を採種し,発芽・生育した11株を育成している. (精油生合成遺伝子導入個体について) リモネン合成酵素遺伝子導入個体について,葉および花穂における精油生産性を評価した.葉では,リモネンのみならず,複数の環化モノテルペン量が増加しており,精油の生産性が有意に増加していた.一方,花穂では,精油全体の生産性が低下しており,特に,リモネンおよびリナロールの生産量が著しく減少していた.このことは,mRNAの発現量でも同様の傾向が認められ,35Sプロモーターでリモネン合成酵素遺伝子(LIMS)を発現させることにより,LIMSおよびリナロール合成酵素遺伝子(LINS)でCo-supressionが誘導されることが推察された.このように導入遺伝子の発現が器官によって異なることにより,精油の生産性に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(SSRマーカーの作成) SSRについては,プライマーの有効性の検証を終了しており,有効なマーカー数は少ないものの,利用可能なマーカーの選抜は終了している.また,F1個体の作出と解析用F2集団の育成にとりかかっており,申請書の予定通り進行している. (精油生合成遺伝子) 精油生合成遺伝子導入個体については,リモネン合成酵素遺伝子導入個体で,精油の生産性評価が終了しており,導入遺伝子が器官別によって異なる発現を行うことを明らかにしている.さらに,リナロール合成酵素遺伝子導入個体についてもすでにいくつか作出しており,精油の生産性評価を行うために増殖を行っているところである.ここまでは,申請書に示した予定と大きく異なることはなく,概ね順調に推移しており,かつ遺伝子導入による精油生合成について興味深い知見が得られている. このため,本研究の大きな軸となる2大課題について概ね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
(SSRマーカー) 有効性が確認されたSSRマーカーを用いてLavandula属各種における遺伝的多様性評価を行う.また,真正ラベンダー(L. angustifolia)の連鎖地図作成のため,F2集団の作成を行うとともに,多型解析を行う. (精油生合成遺伝子) リナロール合成酵素遺伝子を導入したラバンジン形質転換体について,葉および花穂の精油を抽出し,導入遺伝子が精油生合成に及ぼす影響を調査する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
(SSRマーカー) SSRおよび他のDNAマーカーを用いた多型検出に必要な酵素類,F2集団作成のために必要な土等の消耗品を購入する予定である. (精油生合成遺伝子) リナロール合成酵素遺伝子導入個体を育成するために必要な土等の消耗品,ならびに形質転換体を確認するための酵素類および精油分析に必要な試薬,カラム等の消耗品を購入する予定である.
|