研究課題/領域番号 |
23580054
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
石丸 恵 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90326281)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 果実軟化 / 細胞壁 / 細胞壁分解酵素 / 基質特異性 / 構造解析 |
研究概要 |
平成23年度は,トマト果実中に少なくとも7種存在するβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(TBG)のうちTBG4のX線結晶構造解析,TBG1の酵素特性について明らかにすることを目的とした. このうちTBG4のX線結晶構造解析について,TBG4のアミノ酸配列は,植物以外の微生物および動物とはアミノ酸配列の相同性が30%以下であるため,位相の決定が困難であった.TBG4はGH35ファミリーに属し,微生物および動物の立体構造はとられているが,高等植物の立体構造の報告はない.そこで,我々は数種の重原子置換によりデーターの収集を試みたが,位相を決定することはできなかった.現在,セレノメチオニン置換による発現系の再構築を進めている.しかし,これまでに結晶格子タイプ等の基礎的なデーターの収集はできており,成果があった. TBG1の酵素特性については,温度,pH,反応速度パラメーターについて明らかにし,基質特異性についても,種々の合成基質および天然由来基質を用いて解析を行った.TBG1の酵素特性については計画通りに成果が得られ,論文として発表予定である.TBG3については,発現系の構築が遅れており,現在までに活性を有する組換え酵素タンパクは得られていない.特に,TBG1の基質特性は種々の結合様式をもつ3糖では,β(1,3)結合を特異的に認識し,トマト成熟過程の細胞壁との反応性から未熟段階の果実由来細胞壁から多くのガラクトースを遊離することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究目的は,1.トマトβ-ガラクトシダーゼ(TBG)4の基質複合体の構造解析および2.トマトβ-ガラクトシダーゼ(TBG)1および3の酵素特性解析であった. このうち,1については,TBG4の構造解析は終了していないが,構造解析の目途が立ち,次年度中には終了する予定である.これはTBG4のアミノ酸配列が既知のβ-ガラクトシダーゼとの相同性が低く,位相を決定することができなかったためである.このことは予想されたことであったが,新たにセレノメチオニン置換での解析に期待できる. 2については,TBG1の酵素特性は終了し,TBG3についても発現系の再構築は終了しており,解析の目途はついている.酵素特性,反応速度論パラメーターなどは順次TBG1と同様に行い,基質特異性についても同様に種々の結合様式をもつ合成基質,天然物由来基質を解析することが可能である. 以上の2つの項目について,若干の遅れはあるが,研究の進展の目途がついており,おおむね研究計画通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度の計画で未達成であったTBG4の構造解析と基質複合体との構造解析を重点的におこなう.これまで重原子置換でデーターの収集の行ったが,位相決定までには至らなかったため,セレノメチオニン置換により解析を行う.セレノメチオニン置換での構造解析に実績のある五十嵐氏(東大)と金子氏(食総研)の研究協力を得て,実施する予定である.また,TBG3の酵素特性については,発現系の構築は終わっているので,発現誘導をおこない,組換えタンパクの産生をおこなう.基質特異性については,微生物のβ-ガラクトシダーゼなどで実績があり,多種の基質を有している阪本氏(大阪府大)の協力を得て,実施できる環境にある.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は,主に構造解析を行うための旅費,そして,組換えタンパクの産生に関する実験補助の謝金に使用を検討している. まず,旅費については,ビームタイムが限られている中で,結晶構造解析を行う機関(PFまたはSpring-8)への旅費を計上したい.また,国内外を含めた成果報告のための学会への参加を考えている. 次に,実験計画において,平成23年度の課題であるTBG3の発現,そして,今年度からTBGファミリーを順次発現させていく予定にしているので,組換えタンパクの産生に実験補助を雇うことを検討している.組換えタンパクの精製に関する消耗品,結晶化条件の検討のための消耗品についても計上する. 平成23年度の未使用分は,実験補助などの謝金と,実験に関する共同研究推進のための講演料に使用したい.
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