研究課題/領域番号 |
23580056
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
永田 雅靖 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜病害虫・品質研究領域, 上席研究員 (60370574)
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キーワード | 鮮度評価 / 青果物 / 遺伝子発現 / マルチプレクスRT-PCR |
研究概要 |
野菜の「鮮度」は、主に外観で評価され、物性、内容成分の変化も補助的に用いられるが、栽培時期によって、収穫時の物性や内容成分の傾向は異なっているため、これらの数値のみで野菜の鮮度を客観的に評価することは困難であった。そこで、特に鮮度低下の激しい葉菜類を対象に、野菜の収穫後に起きる生理変化と、その原因となる遺伝子の発現に着目して、鮮度低下に伴って発現する遺伝子群を特定し、それらの簡易な検出法を新たに開発することを目的とする。これにより、従来は困難であった野菜の客観的鮮度評価が可能となり、流通過程の具体的な改善を通じて、生産者と消費者に利益をもたらす。平成24年度は、ブロッコリーを20℃で貯蔵し、貯蔵開始時と花蕾が黄化した貯蔵4日目の試料を用いて発現量に差のある遺伝子を濃縮したライブラリーを作り、178個の遺伝子の塩基配列を決定した。Blast検索により、ブロッコリーの黄化に伴って発現量が増加する遺伝子として、ペルオキシダーゼ、システインプロテアーゼ、ACCオキシダーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ等のホモログが特定された。17個のクローンについてノーザンブロット分析を行い、貯蔵に伴う発現パターンによってグループ分けした。これらのうち、グルタミン酸デヒドロゲナーゼは397 bp,暗黒誘導タンパク質は293 bp,ペクチナーゼは198 bpのフラグメントを検出するプライマーを設計し、それらを組合せたRT-PCRで、温度別に貯蔵した花蕾の鮮度低下の兆候を、外観では判断が難しい貯蔵1日目の段階から検出できた。また、レタスでも同様の試験を行い、貯蔵によって変化する137個の遺伝子の塩基配列を決定して、Blast検索を行うとともに、カタラーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、感染特異的タンパク質、プロテアーゼインヒビターの組合せでRT-PCRにより鮮度評価を行うことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブロッコリーとレタスを用いて、貯蔵開始時と、花蕾および葉が黄化した試料を用いて発現量に差のある遺伝子をサブトラクション法で濃縮したライブラリーを作り、それぞれ178個および137個の遺伝子の塩基配列を決定した。Blast検索により、ブロッコリーおよびレタスの黄化に伴って発現量が増加あるいは減少する遺伝子と、既知の遺伝子の対応を明らかにした。既知遺伝子と類似性を示すクローンについてブロッコリーは17クローン、レタスは19クローンのノーザンブロット分析を行い、貯蔵に伴う発現パターンの変化を明らかにして、グループ分けした。これらのうち、ブロッコリーはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、暗黒誘導タンパク質、ペクチナーゼに対応したPCRプライマー、レタスは、カタラーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、感染特異的タンパク質、プロテアーゼインヒビターに対応したPCRプライマーを設計して、混合比を最適化した結果、外観で判断が難しい鮮度低下の兆候を、それぞれ貯蔵1日目の段階から検出可能な鮮度評価法を開発できた。以上により、24年度の研究実施計画にある研究目標をすべて達成できた。さらに、野菜の鮮度指標のひとつであるビタミンCの分析法についても迅速化の検討を行い、遺伝子発現解析との比較が効率的になった。
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今後の研究の推進方策 |
鮮度評価に用いる遺伝子群の全容を決めるとともに、相互に干渉せず、増幅されるフラグメント長が異なるマルチプレクス化PCRを可能とするプライマーの設計を行い、他の葉菜類の品目も含め、なるべく多くの葉菜類に一般的に適用できるプライマーの組合せとなるよう適用性を検討する。 さらに、得られた成果を取りまとめ、学会等で成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・人件費に使用する。なお、次年度使用額748,804円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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