研究課題
本課題では、生物防除微生物Pythium oligandrumを施用したイネの抵抗性誘導を解析し、双子葉植物の誘導機構との関連性を明らかにすることを目的とした。23年度の解析では、種子伝染性のイネ籾枯細菌病(苗腐敗症)に対してP. oligandrumの卵胞子懸濁液を浸種時に処理すると、発病を抑制できることが明らかになった。また、根に卵胞子懸濁液を処理するとジャスモン酸(JA)の情報伝達系に関わる防御遺伝子などの発現上昇が認められた。24年度の解析では、催芽種子にP. oligandrumのエリシターならびにメチルジャスモン酸(MeJA)を浸漬処理し、半定量的RT-PCRにより防御関連遺伝子の発現量を解析した。その結果、根でエリシター処理により発現誘導する遺伝子は催芽種子の幼芽でも発現量が上昇し、またMeJA処理によっても認められた。特に、OsPR6はトマトのPR6のオルソログで、誘導性が双子葉と共通すると考えられた。25年度では、菌類病に対するP. oligandrumの施用効果について解析した。結果、種子伝染性いもち病菌の苗接種実験で、条件によって発病が抑制されることを見出した。また、接種前後のP. oligandrum処理区と対照区間における遺伝子発現をイネアレイで比較解析した。その結果、感染に応答して急速に誘導すると推定される遺伝子群を見出した。以上から、P. oligandrumはイネでは種子伝染性の菌類と細菌による苗病害を抑制できる可能性が示された。また、防御遺伝子の発現誘導はJAの情報伝達系を介しており、双子葉と単子葉に共通する機構が働いていると考えられた。遺伝子発現が感染に対して急速に誘導される特徴は、双子葉では認められていない。誘導機構の相違点を更に解析していくことは、P. oligandrumを活用した生物防除の応用研究に繋がると考えられた。
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