赤かび病菌に対する植物の抵抗性に関わる新規のシグナル伝達因子として、MAPKカスケードの最上流に位置するMAPKKKであるシロイヌナズナのMKD1を見出した。本研究は、MKD1カスケードにおけるMAPKKやMAPK、標的リン酸化タンパク質の機能を明らかにし、病原糸状菌の抵抗性に関わる植物の新たなシグナル伝達経路を確立することを目的とする。 生化学的な解析結果から、MKD1(MAPKKK)→MKK1/5(MAPKK)→MPK3/6というMKD1カスケードが推定されている。MKD1の下流のMAPKKやMAPKにおける赤かび病抵抗性への関与についての解析するため、MKK1、MPK3、MPK6のT-DNA挿入ホモ変異体及びMKK5のRNAiによる発現抑制株を用いて、赤かび病抵抗性について調べたところ、mkk1変異体とRNAi:MKK5形質転換体では、mkd1変異体と同様に野生型に比べて抵抗性が低下していた。一方、mpk3とmpk6変異体については、野生型と比べて顕著な変化は見られなかったことから、MPK3とMPK6との機能重複、あるいは他のMAPKの関与が示唆された。 MKD1カスケードを構成するタンパク質間の細胞内相互作用の解析するため、BiFC法を用いて調べたところ、MKD1とMKK1及びMKK5がシロイヌナズナの細胞質において、相互作用することが明らかとなった。これらの結果から、MKD1(MAPKKK)→MKK1/5(MAPKK)カスケードは、in vivoにおいても機能していることが強く示唆された。また、MKD1がMKK1/5をリン酸化し、さらにMKD1によるMKK1/5のリン酸化部位とMKK1/5の自己リン酸化部位が異なることから、MKD1がMKK1/5を基質とするリン酸化酵素であることを明らかにした。 また、MKD1と同様にRafキナーゼファミリーに属するEDR1との二重変異体は、気孔周辺に細胞死が見られ、加齢とともに拡大していくという興味深い表現型を示すことを明らかにした。
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