研究課題/領域番号 |
23580061
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
高松 進 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (20260599)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 植物寄生菌 / 植物病害 / うどんこ病菌 / 分子系統 / 進化 / 分類 / 生物多様性 |
研究概要 |
1)複数遺伝子領域の塩基配列解析の技術確立 チューブリン,カルモジュリン,アクチン,EF1a,rDNA IGS領域を増幅するためのプライマーの設計およびDNA抽出法,PCR条件の検討を行った.このうち,rDNA IGS領域は技術確立に成功し,現在うどんこ病菌の塩基配列に用いている.チューブリンとEF1aはプライマーの設計およびPCR条件はほぼ確立できたが,まだ実用化には至っていない.他の遺伝子領域についてはまだPCRによる増幅に成功していない.2)うどんこ病標本の採集 日本およびインドネシアにおいてうどんこ病標本の採集を実施した.そのうち,重要と考えられる標本について形態観察と分子系統解析を行った.その結果,現在までに変種を含む6新種を発見した.また,インドネシア・ジャワ島において90年前に一度だけ発見され,その後未報告だったうどんこ病菌を見つけることが出来た.この菌の形態観察および分子系統解析を行い,系統的位置を初めて明らかにした.これらの成果は,国際専門誌に順次論文として公表しつつある.3)我が国に分布するうどんこ病菌リストの作成 2012年にうどんこ病菌の新しいモノグラフが出版され,うどんこ病菌の分類体系が大きく変更されることになった.それに合わせ,日本のうどんこ病菌の学名を更新すべく,日本に分布するうどんこ病菌のリストとともに,学名の新旧対照表を作成し,論文として公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)複数遺伝子領域の塩基配列解析の技術確立 ほぼ目標通りに進行しているが,チューブリンとEF1aの解析技術確立までには至っていない.2)うどんこ病標本の採集と解析 昨年度インドネシアでうどんこ病標本の採集を行い,ある程度の標本を採集した.インドネシアはうどんこ病菌フロラについては未解明の地域であり,新種等も多いので来年度も継続して採集していきたい.この部分については当初期待した以上の成果が得られたと考えている.3)我が国に分布するうどんこ病菌リストの作成 この点については,すでに論文として公表済みであり,ほぼ100%の達成度と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1)複数遺伝子領域の塩基配列解析の技術確立 チューブリンとEF1a領域の解析技術の確立を目指す.また,これ以外の領域についても解析技術確立の可能性について検討したい.2)うどんこ病標本の採集と解析 インドネシアにおけるうどんこ病菌採集を継続するとともに,他の東南アジア地域においても可能であれば採集を行う予定.なお,インドネシアでの採集については,インドネシア側の研究者との共同研究となっており,生物多様性条約等に関する問題はない.うどんこ病菌はもともと北半球温帯地域が主要な分布域で,熱帯,亜熱帯地域へはのちに分布を拡大したと考えられる.今年度の調査において,うどんこ病菌の熱帯,亜熱帯地域への適応戦略が示唆されてきたので,次年度においては熱帯地域への適応と多様化の要因についてさらに検討を進めるとともに,必要なデータの取得に務めたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
1)海外出張旅費 インドネシア他,東南アジアでのうどんこ病標本採集のための旅費.博士課程の学生を1名随行する予定.2)国内出張旅費 学会参加旅費および国内でのうどんこ病標本採集のための旅費として使用予定.3)DNA解析用試薬類 PCR用ポリメラーゼ,アガロース,DNAマーカー,プライマー他4)DNAシークエンス委託費 1000円/ 1 run×500 run程度5)未使用額が生じた状況 チューブリンとEF1a領域の解析がまだ実用化まで至らなかったため,その分のシークエンス試薬,委託費等が未使用となった.今年度は当該領域のシークエンス技術の確立を目指し,シークエンスを実施する予定.
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