研究課題
今年度は、昨年度に引き続き、ゲノム構造が酷似しているにもかかわらず宿主特異性が厳密に決まっているイネいもち病菌(イネ菌)とキビいもち病菌(キビ菌)をイネに接種し、プロテオームおよびトランスクリプトーム解析を行った。この結果、イネ菌あるいはキビ菌を接種したイネにおけるトランスクリプトームの比較により、宿主因子である可能性が知られているトランスポーターのホモログの1つに関して、遺伝子発現がイネ菌接種により上昇する事が明らかになった。いもち病菌接種におけるこの遺伝子発現の変化をreal-time PCRにより定量的に確認したところ、イネいもち病菌を接種した時にのみ発現が有意に上昇する事が確認された。この結果から、この輸送タンパク質は本来の機能に加えて、病原菌によって発現誘導され、感染に必要な栄養源を獲得するために利用される宿主因子である可能性が強く示唆された。さらに、イネ菌あるいはキビ菌を接種したイネよりタンパク質を抽出し、2次元電気泳動によって発現するタンパク質を比較するプロテオーム解析を行ったところ、高い再現性で発現に顕著な差異のあるタンパク質が少なくとも16個見出された。このうち、4つは同一遺伝子由来のペプチド断片を含むタンパク質であり、根粒菌の共生関係成立に重要な役割を果たすことが知られている膜タンパク質であることが明らかになった。このタンパク質は、いずれの菌を接種した場合にも発現が変動し、2次元電位泳動により異なるスポットとして同定されることから、何らかの修飾を受けていると推定された。このタンパク質の機能は今後さらに詳細に検討する必要がある。3年間の研究から得られた知見は、いずれもイネいもち病を感染初期段階で阻止する強力な耐病性をイネに付与できる可能性を秘めており、耐病性イネ作出のための有力な方策となることが期待される。
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DNA Research
巻: 20 ページ: 593-603
10.1093/dnares/dst033