研究概要 |
本研究は、イネいもち病菌感染時に見られた宿主ジベレリン不活性化酵素遺伝子GA2-oxidase3誘導の生理的な意義の解明を目的とする。これまでにいもち病菌接種葉5-6日目におけるGA2-oxidase3遺伝子の発現誘導をリアルタイム定量PCRにより確認し、さらに感染葉において活性型GA(GA1)量の低下と不活性型(GA8:2位が水酸化されたGA1)が増加することを明らかにしている。本年度は以下の結果を得た。1.イネいもち病菌感染時の活性型GAの低下の時間的・空間的範囲を明らかにするため、いもち病菌感染個体地上部全体の、接種後2日目-5日目のGAの経日的量的変化をLC/MS/MSを用いて分析した。その結果5日目の感染個体地上部において活性型GAが減少し、不活性型GAの増加が認められた。この結果から、いもち病菌感染によるイネGA内生量の低下は感染葉だけではなく、個体レベルで起こることが示唆された。2.近年、植物ホルモンの一つであるアブシジン酸をいもち病菌が産生し、これが植物の抵抗性を抑制している可能性が指摘されている。アブシジン酸はGAと拮抗的に作用することが知られることから、GA分析に用いた同質サンプルのアブシジン酸を分析した。その結果、いもち病菌感染によるアブシジン酸量の変動は見られなかった。3. イネいもち病菌がGAを産生するか否かを明らかにするため、高感度に調べた。人工培養したイネいもち病菌の分生子や菌糸、その培養後の培地ろ液から活性型GA(GA1,GA3,GA4)の検出を試みたが、検出されなかった。
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