研究課題
本研究は、イネいもち病菌感染時に見られた宿主ジベレリン不活性化酵素遺伝子誘導の生理的な意義の解明を目的とする。これまでにいもち病菌接種葉におけるジベレリン不活性化酵素GA2-oxidase3遺伝子の発現誘導をリアルタイム定量PCRにより確認し、さらに感染葉および地上部全体において活性型GA(GA1)量の低下と不活性型(GA8:2位が水酸化されたGA1)が増加することを明らかにしている。本年度は以下の研究を行った。1. 昨年作製したGA2-oxidase3遺伝子ノックダウンイネの形質転換イネの解析を行った。作製した独立20ラインのうち、6ラインが不稔、10ラインが低稔性を示した。GA2-oxidase3遺伝子は通常においても高い発現を示すため、この生育異常が遺伝子の発現低下によることも考えられた。今後この可能性の検討を行う必要がある。昨年フランス研究機関より入手した本遺伝子T-DNA挿入破壊株には実際には本遺伝子にT-DNAの挿入が認められなかった。2. イネいもち病菌ゲノム内にGA産生菌であるイネ馬鹿苗病菌のGA生合成酵素遺伝子クラスターに類似の配列領域が存在することが報告されている。昨年に引き続きイネいもち病菌のGA産生能力を検討するため、この領域の2つのGA生合成酵素様遺伝子の遺伝子破壊株の作製を試みた。しかし複数のプライマーおよび条件でこれら遺伝子の増幅を試みたが、各遺伝子を増幅することが出来なかった。本研究で用いたいもち菌株(北一)はゲノムプロジェクトの株(70-15)とは異なるため系統によってゲノム配列に大きな違いがある可能性が考えられた。今後70-15株を用いて遺伝子破壊株を作製するとともに、本株感染時のイネGA2oxidase-3遺伝子発現を調べることを検討している。
すべて 2013
すべて 学会発表 (1件)