病原菌認識を担うResistance(R)蛋白質の働きにはRAR1-SGT1-HSP90複合体による制御が必須である。HSP90は分子シャペロンの1つで、コシャペロンと呼ばれる結合因子と協同してシグナル伝達系の制御因子(ホルモン受容体、キナーゼ、転写因子など)の構造形成や活性調節を行う。RAR1及びSGT1はHSP90のホモ二量体と結合し、さらにSGT1とHSP90はR蛋白質とも結合することから、RAR1及びSGT1はコシャペロンとしてHSP90と共にR蛋白質の構造形成や機能調節に関与していると考えられる。我々はSGT1のSGS domainに変異を持つ機能欠損変異体を多数同定しており、これら変異体はR蛋白質を安定化できず、病害抵杭性も低下する。このことはSGS domainがR蛋白質の制御に極めて重要であることを意味している。酵母ツーハイブリット法により、SGS変異体と大麦のR蛋白質であるMla1のLRRドメインとの結合を調べたところ、野生型では結合が見られたのに対してSGS変異体のいくつかでは明らかに結合が低下していた。このことから、SGSドメインとR蛋白質LRRドメインとの結合はR蛋白質の安定化及び病害抵抗性の誘導に重要な役割を果たすことが明らかになった。しかしながら、SGS変異体のいくつがはR蛋白質との結合は変わらなかったことから、SGSドメインはR蛋白質との結合だけでなく、未知の役割を持つことが示唆された。さらに、SGT1発現抑制植物にR蛋白質のドメインを発現したところ、SGT1はR蛋白質のN末端ドメイン及びNBS (Nucleotide binding site)ドメインの安定性に影響を与えないのに対し、LRRドメインの安定化に極めて重要であることが分かった。このことから、SGT1はR蛋白質のLRRドメインの構造安定化に関わっていることが強く示唆された。
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