研究課題/領域番号 |
23580069
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
落合 正則 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (10241382)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 昆虫 / サイトカイン / プロテアーゼ / 微生物 |
研究概要 |
昆虫が細菌やカビなどに感染した場合、液性と細胞性の免疫反応が体液中で起こる。昆虫サイトカインであるENFペプチドは多様な生理活性をもつことが報告されており、そのひとつに細胞性免疫反応と密接な関係がある血球活性化作用がある。ENFペプチドは普段血液中では前駆体として存在しており、微生物に感染するとENFペプチド前駆体が限定加水分解されて活性化すると考えられている。本研究はこのサイトカイン前駆体の活性化機構を解析し、昆虫の微生物感染に対する細胞性免疫反応と液性免疫反応の連携の分子機構ついて理解を深めることを目的にしている。研究期間内にカイコのENFペプチド前駆体活性化酵素(pENF processing enzyme;pEPE)の同定、組織における局在性及び発現調節機構などを明らかにし、液性免疫系に関与するタンパク質とこの酵素の相互作用について詳細に検討する予定である。このうち、平成23年度は,以下の研究を行う計画であった。1. pEPEの精製 : ENFペプチド前駆体の組換え体を基質に用いてpEPEの検出系を確立した後、カイコ血漿画文を数リットル用意し、各種クロマトグラフィー用カラムを駆使してpEPEの精製を行う。2. pEPEの構造解析 : 精製標品の部分配列解析をもとにハイブリダイゼーション用のプローブを調製し、定法に従いcDNAのクローン化を行う。得られた一次配列情報よりその機能や構造について推定し、pEPE自体が限定加水分解などにより活性化される可能性について検討する。 1. に関しては,pEPEの精製はほぼ終了し,LC-MS解析により部分配列情報を得ている最中である。2. の構造解析はLC-MS解析結果を元に行うことから次年度に先送りし、平成24年度の予定を前倒ししてpEPEの性状を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的にあげた2つの項目のうち、1. pEPEの精製については、pEPEの体液中の濃度が低いことと生体防御系を活性化させずに大量の体液を採集することが困難であることから、平成23年度はpEPEの同定に集中する予定であった。pEPEの体液中の濃度が予想以上にに低かったため予定より時間が掛かったが、pEPEの精製はほぼ終了した。現在、部分配列情報を得ているため精製標品をLC-MSにより分析中である。そのため、2. pEPEの構造解析はLC-MS解析後に行うことにし、平成24年度に予定していたpEPEの性状の解析を前倒しして行った。当初の研究目的にあげた予定とは前後してしまったが、最終的な到達点から見れば研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に終了する予定であったpEPEの構造解析を先に行う。その後、研究目的にあげた平成24年度の研究計画に沿って、pEPEの発現制御の解析と血漿中の異物認識分子よりそのシグナルが伝わってpEPEが活性を発現するメカニズムについて調べる。具体的には以下の研究を行う予定である。1. pEPEの発現と遺伝子構造 : pEPE mRNAのカイコ組織における発現量をRT-PCR法で測定する。また、細菌や真菌の感染により誘導合成されるのかを転写・翻訳レベルで調べ、pEPEが抗菌蛋白質誘導合成系による遺伝子発現制御をうけているか否かを確認する。ゲノム情報より活性化因子の遺伝子構造と発現制御領域を調べ、発現様式について推定する。2. 血球突起伸長反応の解析 : in vitroにおいて、pEPE、ENFペプチド前駆体、プラズマ細胞を用いた突起伸長反応の再構成を試みる。その際、細菌やカビなどの病原菌に対する異物認識蛋白質の存在下での伸長反応の解析を行い、異物認識蛋白質とpEPEの相互作用の有無についても知見を得る。 以上のpEPE分子の基本情報をもとに、液性免疫系であるメラニン形成系と抗菌ペプチド合成系とENFペプチド前駆体を活性化する系との連携のメカニズムを探る予定である平成25年度の研究計画へ繋げたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に行う予定であったpEPEの構造解析用の費用の多くを平成24年度に繰り越した。また、東日本大震災の影響で平成23年度研究費が3割減になる可能性が当初あったため、研究補助員の雇用を平成23年度は見送った。そのため、その謝金分も平成24年度に繰り越した。平成24年度は当初の計画通り、研究補助員を雇用して上記の研究目的を達成するため研究を推進する。繰越金を含め、請求する研究費を使用する予定である。
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