研究課題
最終年度では、クロオオアリのNiemann-Pick type C2タンパク質(CjapNPC2)より詳細な性状を調査し、立体構造を精査した。蛍光拮抗結合アッセイから、CjapNPC2は、様々な疎水性長鎖脂肪酸、アルコール、酢酸と結合することを明らかにした。ガスクロマトグラフィー直結触角電位検出器にクロオオアリワーカー触角を設置し、CjapNPC2と結合した疎水性リガンドを調査した結果、酢酸ヘキサデシル、酢酸オクタデシル、リノレイルアルコールに対して触角が応答することを明らかにした。すなわち、上述の3種の化合物は情報伝達物質であると結論した。前年度で最適化した測定条件で円偏光偏光二色性の計測したところ、CjapNPC2はβ構造リッチなタンパク質であると結論した。さらに、前年度で大量発現条件、予備実験結果を基に、CjapNPC2の結晶化を進め、X線解析により、立体構造を明らかにした。CjapNPC2の立体構造は、3つのジスルフィド結合を持つ上述の通りの構造であった。アポ型とリガンド(オレイン酸)結合型の比較により、CjapNPC2のリガンドに対する水素結合ネットワークを介した結合様式、112番目のトリプトファンの角度変化によるリガンド排除分子機構を明らかにした。以上の結果と先の2年間の研究成果から、ヒトではNPC2はコレステロールを運搬する必須なタンパク質であるのに対し、アリでは、結合ポケットの柔軟なβ構造を利用して、コロニー維持に関わる様々な情報伝達物質の運搬するタンパク質として特異な分子進化遂げていたと結論した。以上の研究成果は、米国科学アカデミー紀要に発表した。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 111 ページ: 3847-3852
10.1073/pnas.1323928111
http://www.pu-toyama.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/02/26-2-26ishida.pdf
http://www.nias.affrc.go.jp/press/2014/20140224/
https://sites.google.com/a/utlae.org/jp/home/announcements/fushanxianlidaxue%E3%80%81shengwuyan%E3%80%81zhubodatonogongtongyanjiugapnasnijiezai