研究課題/領域番号 |
23580071
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
東 政明 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20175871)
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研究分担者 |
小林 淳 山口大学, 農学部, 教授 (70242930)
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キーワード | アクアポリン / 原形質膜機能 / 排泄 / 浸透圧調節 / 中腸 |
研究概要 |
生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能である。細胞内外の水輸送をつかさどる分子が,細胞の原形質膜にあるアクアポリン(水チャネル)である。この分子は,哺乳類では腎臓(尿の再吸収),皮膚(肌の潤い),眼の渇き防止等で機能しており,生活の質(QOL)へ密接に関わっている。一方,昆虫は外骨格で,しかも血管を持たない体制で生命維持しているので,このアクアポリン分子のはたらき・使い道や分布が哺乳類とは異なっている。昆虫は小さな体でありながら,そのごく少量の体内水分をアクアポリンを使って効率よく循環させ,からだの乾き(渇き)を防いでいることを明らかにしてきた。 カイコ幼虫をモデルにしてH23年度より研究に着手し,昆虫アクアポリンの特徴を国際雑誌へ報告してきた。平成24年度はクローン化したカイコのアクアポリンの生理的役割について調査した。また,その過程で,カイコで得られた成果を拡げ,ハエ成虫(双翅目昆虫)やコガネムシ幼虫(鞘翅目昆虫)における存在について調査した。ハエでは感覚器官での同定に成功し,いわゆる匂いや味を感じ取る細胞には潤い(wetness)が必要であるが,その組織へアクアポリンを介して水分を供給していることがわかった。また,植物の根を食害するコガネムシ幼虫でも消化管組織(中腸・後腸)でアクアポリンが原形質膜に分布していることを示した。後者の鞘翅目昆虫では,我々が初めて分子としてアクアポリンをクローン化し,水輸送機能を解析し,国際雑誌へ投稿することができた(受理済,平成25年度に公表予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際雑誌へ、平成24年度に2編公表した。 一つは,J. Insect Physiol 誌において,昆虫の溶質輸送機構の分子生理学の特集号が組まれ,その中で昆虫の水輸送の分子機構について,カイコ後腸での水通過の実態を細胞レベル・上皮組織レベルから説明した(2012年4月号)。本特集号で水輸送に関する記述はわれわれの公表論文のみで,ダウンロード数も一時期,most-downloaded articles内にアップロードされ,注目されていることが伺われた。 もう一つは,ハエの感覚器官(感覚子:sensilla)における水供給の分子として存在していることを示した。昆虫でも消化管系以外のところでアクアポリンが確かに分布していることをハエの感覚子で示すことができた(J. Chem Ecol 誌)。 これらの成果サマリーを日本蚕糸学会和文誌(蚕糸・昆虫バイオテック)へ,『昆虫の水バランスをつかさどるしくみ』のなかの一つの総説記事として公表した(2012年4月号)。
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今後の研究の推進方策 |
標記研究課題のコアである,人工膜へカイコのアクアポリンを組み込ませた人工膜(プロテオリポソーム)を作製し,それを用いた輸送活性の機能解析について,初年度より少しずつ準備してきたが,特にこの点を最終年度では,少しでも実験系として軌道に載せる予定である。水輸送そのものを測定することは困難であるので,われわれがこれまでにクローン化したアクアグリセロポリン(GLP)型のAQP-Bom2(DDBJ: AB245966)について,14C-glycerol や 14C-urea 輸送について,測定できるように実験を進めることにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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