現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度はアブラムシがイネ幼根に寄生した際に生じる遺伝子発現の変動をマイクロアレイにより網羅的に解析することを目標として、イネ幼根からのRNAの抽出・調整方法の最適化を行い次の条件を見出した。(1)播種後4日のイネ芽出しアブラムシを寄生させる。 (2)寄生後4日目の植物体を試料とする。 (3)RNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN)を用いて生体からRNAを抽出する。 このような方法で得られたtotalRNAをDNase(Promega)で処理した後、Agilent社のKitを用いて蛍光ラベル化cRNAを合成した。これをマイクロアレイチップ(Rice RAP-DB, 4 X 44K, Agilent)にハイブリダイズし、Agilent DNA Microarray Scannerにてデータを取り込み、専用ソフトでデータを正規化した。得られたデータを解析したところ、アミノ酸類の生合成酵素をコードする遺伝子の発現増加が確認され、少なくとも寄生部位にてアミノ酸の生合成が活性化されていることが確認された。一方、アミノ酸を寄生部位へ流転させる、生理変化については情報が少なく現在まで流転が生じている証拠は見いだせていない。これらのことから、研究対象のアミノ酸選択的蓄積機構は寄生部におけるアミノ酸生合成の活性化によるものであると推定できた。 アミノ酸選択的蓄積機構が一つに絞れたことから予想以上に進展しているものと判断した。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、イネ根からtotalRNAを抽出しcRNAを合成した後にイネオリゴマイクロアレイ(44k)にハイブリダイズし、遺伝子の発現を分析した。これらの経費の中でDNAを定量するために導入した紫外可視光分光光度計購入費(777,000円)およびRNA抽出・調整にかかる消耗品費(387,918円)以外の約2,400,000円は主に別途確保した恒常的経費を用いて研究を遂行したため、732,082円の繰越金が発生するに至った。 本年度は次の3小課題を実施する。すなわち、(1) アブラムシ寄生によるアミノ酸および生合成関連物質の経時的変化の測定。 (2) 対象遺伝子の酵素活性の経時的変化の測定 (3) アブラムシ寄生による発現遺伝子の経時的変化の測定、である。これらの中で植物の栽培、アブラムシの飼育、試料の調整、酵素活性の測定は高知大学で行い、遺伝子発現解析は徳島大学で、メタボローム解析は山形大学で行う。 そのため高知大学では植物栽培・昆虫飼育にかかる経費(70,000円)、酵素活性測定に必要な試薬費(200,000円)・プラスチック器具費(100,000円)、および遺伝子発現解析のための分子生物試薬費(150,000円)の合計520,000円を計上し、徳島大学では対象遺伝子の酵素活性の経時的変化の測定のための遺伝子発現解析のための分子生物試薬費(412,082円)・プラスチック器具費(300,000円)の合計762,082円を計上し、山形大学ではメタボローム解析に必なCE-TOF-MS分析の消耗品費(200,000円)、試薬費(200,000円)、プラスチック器具費(200,000円)の合計600,000円を計上した。 これらはいずれも本申請課題を遂行するために必要な経費である。また、経費が不足する場合は各員にて恒常的経費を用いて研究を遂行する予定である。
|