• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

イモゾウムシ病原性原虫の病理学および疫学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23580076
研究機関九州大学

研究代表者

青木 智佐  九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20264103)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードイモゾウムシ / Farinocystis様原虫 / 生活環 / 宿主親和性 / 原虫感染簡易検出法
研究概要

(1)イモゾウムシ病原性原虫の感染増殖様式および生活環を解明するため、原虫オオシストを接種したイモゾウムシ個体を経時的に包埋し、組織切片を作製して光顕下で観察した。本原虫の生活環はFarinocystis triboliiのものに類似していた。しかし、その一部は本原虫特異的と考えられ、新規の感染増殖様式をもつ可能性が示唆された。 (2)本原虫の宿主範囲を明らかにするため、鞘翅目昆虫数種への接種試験を行った。接種2週間後に、接種個体の組織切片を光顕下で観察するとともに、同個体よりゲノムDNAを抽出して、後述の(4)により原虫感染を調査した。供試したシロテンハナムグリ、コクゾウムシ、アズキゾウムシでは原虫感染は認められなかった。一方、コクゾウムシではPCRにより原虫感染が確認されるとともに、組織中にはスポロゾイトが観察された。しかし、それ以降の原虫細胞は認められず、本原虫はコクゾウムシ体内で生活環を進めることはできないと判断された。本原虫の宿主範囲はかなり狭く、イモゾウムシに高い親和性を示すものと推察された。 (3)本原虫の分子生物学的性状の解明を目的として、原虫オオシストより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、Apicomplexa門原虫の18S rRNAの保存領域から設計されたプライマーペアを用いてPCRを行った。得られた約950 bpの増幅産物のダイレクトシーケンスによって、本原虫の18S rDNAの一部塩基配列を決定することができた。 (4)イモゾウムシ根絶防除事業での不妊化用イモゾウムシにおける原虫病の蔓延を防ぐためには、原虫感染の早期発見が重要である。そこで、本原虫のITS領域の塩基配列をもとに特異性の高いプライマーを設計し、原虫感染簡易検出法を確立した。原虫特異的な増幅産物の配列中にはEcoRI認識配列が存在し、PCR-RFLP解析においても有効であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、以下のように着実に成果を得ていることから、おおむね順調に進展していると評価した。 (1)イモゾウムシ病原性原虫の感染増殖様式および生活環の解明については、in vivoでの感染増殖様式および生活環の概略を特定できた。 (2)イモゾウムシ病原性原虫の宿主範囲および病原性の調査については、数種鞘翅目昆虫への感染実験を終了した。 (3)イモゾウムシ病原性原虫の分子生物学的性状の解明については、原虫オオシストよりゲノムDNAを抽出し、18S rDNAの一部塩基配列を決定することができた。 また、次年度に計画していた(4)イモゾウムシにおける原虫感染簡易検出法の開発についても、すでに原虫特異的プライマーを作製するに至っている。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、以下の(1)~(4)の研究を進めるとともに、今年度新たに(5)の研究を展開する。 (1)イモゾウムシ病原性原虫の感染増殖様式および生活環の解明:in vitroでの原虫感染イモゾウムシ幼虫由来の初期培養を出発点として、より詳細な原虫の感染増殖様式および生活環の解明を進める。また、新たに確認されたアリモドキゾウムシでの原虫感染の実態解明を試みる。 (2)イモゾウムシ病原性原虫の宿主範囲および病原性の調査:供試昆虫種を増やして生物検定を行うとともに、各昆虫種に対する病原性の数値化(感染率、死亡率、半数致死オオシスト濃度)を目指す。 (3)イモゾウムシ病原性原虫の分子生物学的性状の解明:原虫オオシストの人工的脱嚢法を検討するとともに、得られたスポロゾイトを供試して、核型を調査する。 (4)イモゾウムシにおける原虫感染簡易検出法の開発:既に作製済みのプライマーの検証および改良を行う。 (5)原虫感染簡易検出法を用いたサツマイモ塊根内での原虫感染率の調査:(4)で確立した原虫感染簡易検出法を利用して、サツマイモ塊根内個体群、人工飼料内個体群等、各個体群での原虫感染の実態解明を試みる。

次年度の研究費の使用計画

大型備品の購入は予定していない。次年度に計画している研究費の使途概略は以下の通りである。 (1)消耗品費:600,000円(細胞培養試薬類、プラスチック器具、光顕・電顕試料調製用品、核酸関連試薬・酵素類の購入) (2)旅費:150,000円(研究成果発表、研究打ち合わせ) (3)その他:50,000円(研究成果投稿料、他)

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 特殊害虫イモゾウムシから見つかった原虫病2011

    • 著者名/発表者名
      青木智佐
    • 雑誌名

      蚕糸・昆虫バイオテック

      巻: 80 ページ: 211-213

  • [学会発表] イモゾウムシ病原性原虫の宿主範囲の調査2012

    • 著者名/発表者名
      新見はるか・鶴田幸成・青木智佐・松山隆志・飯山和弘・清水 進
    • 学会等名
      第56回日本応用動物昆虫学会大会
    • 発表場所
      奈良県奈良市・近畿大学農学部
    • 年月日
      2012年3月28日
  • [学会発表] イモゾウムシ病原性Farinocystis様原虫の疫学的研究-12011

    • 著者名/発表者名
      新見はるか・松山隆志・飯山和弘・青木智佐・清水 進
    • 学会等名
      第73回昆虫病理研究会
    • 発表場所
      東京都文京区・東京大学農学部
    • 年月日
      2011年12月3日
  • [学会発表] PCRを用いたイモゾウムシ病原性Farinocystis様原虫の検出-22011

    • 著者名/発表者名
      新見はるか・松山隆志・飯山和弘・青木智佐・清水 進
    • 学会等名
      日本蚕糸学会東北支部・関東支部・関西支部・九州支部合同大会 蚕糸・昆虫機能利用学術講演会
    • 発表場所
      岩手県盛岡市・岩手大学農学部
    • 年月日
      2011年11月5日

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi