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2012 年度 実施状況報告書

植物の分泌物質がヒメハナカメムシ類の繁殖や生存に及ぼす効果

研究課題

研究課題/領域番号 23580078
研究機関宮崎大学

研究代表者

大野 和朗  宮崎大学, 農学部, 准教授 (10203879)

キーワード保全的生物的防除 / 総合的害虫管理 / 捕食性天敵
研究概要

初年目に作成したプロトコールを基に、雨よけ栽培施設にナスとオクラを植栽し、9月および10月にタイリクヒメハナカメムシ成虫を放飼し、オクラ上で大豆タンパク(豆乳)の100倍希釈液を散布した。いずれの実験でも、大豆タンパクによるマーキング個体が数%検出されたが、野外でのヒメハナカメムシ類の移動を追跡するという点では不十分であると結論された。ヒメハナカメムシ類個体群の持続性をオクラを植生管理として植栽した農家ほ場(植生管理ほ場、宮崎市清武町および延岡市)で、害虫個体群および天敵個体群の密度推移を調査した。植栽管理をせず、天敵に影響のない選択的農薬を使用した農家ほ場(天敵保護ほ場)では、餌となるアザミウマ密度が葉あたり1頭以下に抑えられたたが、ヒメハナカメムシ類の密度も0.1以下の非常に低い水準で推移した。対照的に植生管理ほ場では、アザミウマ類の密度が低下した8月中旬以降もヒメハナカメムシ類の密度は高く推移し、オクラでは9月末までヒメハナカメムシ類の発生が続いた。以上の結果から、オクラの植栽はヒメハナカメムシ類個体群の維持に高い効果があること、また間接的ではあるが、密度推移から判断して、オクラからのヒメハナカメムシ類の移動によりナス上では捕食性天敵ヒメハナカメムシ類が常に維持されていると考えられた。オクラでは真珠体とわずかな餌(アザミウマ類)によりヒメハナカメムシ類は繁殖や発育が可能(昨年実績)であるが、さらにヒメハナカメムシ類個体群の維持に有用と思われる天敵温存植物としてホーリーバジルについてその効果を検討した。世界的に捕食性天敵に有用と考えられているソバよりも高い効果がホーリーバジルで認められた。生存率はソバと同レベルであるが、日当たり産卵数で評価するとソバよりも有意に高い値を示した。このことから、ホーリーバジルなどの植栽もヒメハナカメムシ個体群の維持に有用と考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タンパク質によるマーキングは室内実験での高い値を、野外で実現することが難しいと考えられたが、オクラ植栽により実際の農家ほ場で捕食性天敵個体群の持続性を高めることが可能なこと、またオクラが生育するまでの栽培初期(5月から7月下旬)にヒメハナカメムシ個体群のほ場への誘引、繁殖能力向上のための天敵温存植物候補としてホーリーバジルの有効性を実験室で明らかにできた。総合的害虫管理やその体系の一部としての天敵の保護・強化の有効性を農家ほ場で実証した研究はないことから、2年目の成果としては主目的である天敵個体群の持続性、安定性の向上のための技術的な構築にはほぼ目処がついたと考える。

今後の研究の推進方策

オクラでの天敵個体群の持続性をさらに農家ほ場で実証しながら、地域性や害虫の発生傾向との関係から、保全的生物的防除の技術的な完成を目指す。また、ホーリーバジルなどの天敵温存植物の実験室内での成果を踏まえ、野外ほ場での天敵群集や餌となる植食性昆虫群集の推移を調査する。

次年度の研究費の使用計画

1)農家ほ場での実証~宮崎市内、延岡市、高千穂町を中心にオクラを植栽した露地ナスほ場でのヒメハナカメムシ類を含めた天敵個体群の密度推移を解明。植生管理のためのオクラ、ハーブ類の種子や苗を大量に用意し、農家に配布済み。
2)室内実験:ホーリーバジルなどのハーブ類の花粉や花蜜がタイリクヒメハナカメムシの生存や繁殖に及ぼす効果の定量的な評価を進める。現在、野外個体群を含め、室内系統を確立中。
3)Zoophytophagousの天敵つまり、動物質餌と植物質餌を利用するヒメハナカメムシ類のような捕食性天敵について、生活史特性を評価し、本研究申請時に提案した「植物質餌の意義」について最終的な解明を進める。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] Trends and Development strategy of Biological control in Japan2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuro Ohno
    • 学会等名
      International Symposium for Insect Industrial Development
    • 発表場所
      韓国ソウル
    • 年月日
      20130509-20130509
    • 招待講演
  • [学会発表] 保全的生物的防除を基幹とした害虫管理:インセクタリープラントからの天敵の移動2013

    • 著者名/発表者名
      大野和朗・林和毅・竹之山杏子・北原結花・佐藤信輔
    • 学会等名
      第57回日本応用動物昆虫学会大会(日本大学)
    • 発表場所
      日本大学湘南キャンパス
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] Conservation biological control based IPM: implementation in open eggplant fields2012

    • 著者名/発表者名
      Kazuro Ohno
    • 学会等名
      5th International Symposium for the development of IPM for sustainable agriculture in Asia and Africa
    • 発表場所
      マレーシア
    • 年月日
      20121218-20121220
    • 招待講演
  • [学会発表] Conservation biological control of thrips: Behavioral response of Orius strigicollis to Okra as an insectary plant2012

    • 著者名/発表者名
      Kirika Shigetomi, Kazuro Ohno and Tomoki Hayashi
    • 学会等名
      5th International Symposium for the development of IPM for sustainable agriculture in Asia and Africa
    • 発表場所
      マレーシア
    • 年月日
      20121218-20121220
  • [学会発表] 捕食性天敵の保護強化を目的としたインセクタリープラントとは?2012

    • 著者名/発表者名
      大野和朗・重富紀里佳・北原結花・林和毅
    • 学会等名
      第22回天敵利用研究会岡山大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      20121212-20121213

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公開日: 2014-07-24  

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