研究課題/領域番号 |
23580083
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
高須 陽子 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (00414912)
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キーワード | TALEN / カイコ(Bombyx mori) / 遺伝子ターゲッティング / セリシン |
研究概要 |
初年度に作製したセリシン遺伝子ノックアウト個体検出用の系統を用いて、セリシン遺伝子を標的として設計したジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)のmRNAを注射した。384粒の受精卵に注射し、54組の蛾から受精卵を採種した。孵化5-7日前に蛍光タンパク質の発現によりZFNの効果を調べたが、蛍光タンパク質遺伝子上流域の標的配列に変異が導入された卵は見つからなかった。今回設計したZFNはカイコ受精卵において切断活性が低かったと判断し、他の方法を検討した。 ZFNに代わる新しい遺伝子標的法であるTranscription activator-like effector nuclease(TALEN)の有効性をカイコで確認したことから、本研究でもTALENの使用によるセリシン遺伝子のノックアウトを試みた。Ser1遺伝子およびSer3遺伝子のエクソン配列にTALENの標的を設定し、それぞれに対応するTALEN遺伝子をクローニングし、そのmRNAをカイコ受精卵に注射した。卵は通常通り孵化し、区内で交配してそれぞれ31蛾区および61蛾区の受精卵を得た。それぞれ4蛾区の受精卵を掃き立て、各蛾区15頭を飼育した。5齢幼虫までは通常通り成長したが、吐糸できずに蛹化する裸蛹や不吐糸蚕となって死ぬ個体が多く出現した。Ser1実験区では正常な繭を作った個体が13頭、薄皮繭を作った個体が12頭、Ser3実験区では正常繭27頭、薄皮繭3頭であった。これらの繭のセリシンタンパク質を分析したところ、対応するセリシンタンパク質が欠失していた繭がSer1実験区で17粒、Ser3実験区で10粒であった。対応するセリシンが欠失していた個体の一部についてゲノムの配列を調べたところ、塩基の欠失および挿入が見られたことから、TALENによるSer1およびSer3遺伝子のノックアウトが成功したことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZFNによる遺伝子ノックアウトが失敗に終わったため、TALENを用いる方法に切り替えたが、TALENの効率が非常に高いことから、変異個体の検出も比較的容易で、当初の予定通りセリシン遺伝子のノックアウトに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Ser1およびSer3遺伝子のそれぞれについて、単一の変異を持つ変異系統を2、3系統ずつ作製し、それらの変異が中部絹糸腺における目的遺伝子の発現や、カイコの営繭行動、繭および絹糸腺の性状に及ぼす影響を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主にDNA・RNAの抽出用試薬、遺伝子発現解析用キット、PCR試薬、遺伝子配列分析用試薬、タンパク質電気泳動用試薬およびこれらの実験に必要なプラスチック器具等の購入費および人件費として研究費を使用する予定である。
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