研究概要 |
キイロショウジョウバエと、その共生細菌で「雄殺し」という生殖操作をおこなうスピロプラズマからなる共生系をモデル実験系とし、スピロプラズマおよびそのファージの共生関連遺伝子とその機能や、スピロプラズマと宿主免疫機構との関係、子孫の性比に関係する宿主遺伝子とその機能などについて明らかにすることを目的に研究を遂行した。1.3系統のスピロプラズマ(Drosophila nebulosa由来の雄殺しスピロプラズマNSRO系統、NSRO系統の突然変異体で雄を殺さないNSRO-A系統、キイロショウジョウバエ由来の雄殺しスピロプラズマMSRO系統)のファージのゲノム解析を進め、それぞれ予想される全長にほぼ等しい19,019 bp、18,372 bp、19,052 bpの結合配列を得た。ORF検索により、それぞれ23(ないし24)のORFが推定され、Spiroplasma citriや雄殺しスピロプラズマの既知の遺伝子と高い相同性を示した。その中にはS. citriにおいて昆虫との相互作用に関わっていると推測されるP58, P12, P18, P54, P123が含まれていた。その他、スピロプラズマのファージの組換えタンパク質遺伝子や機能未知の膜透過タンパク質遺伝子が存在した。3つのファージの間で遺伝子のレパートリーはほぼ一致していたが、一部異なる部分もあり、雄殺しとの関連が興味深いところである。2.カスリショウジョウバエのスピロプラズマの、微小注入法によるキイロショウジョウバエへの移植を試みたが、成功しなかった。3.性比が雄に偏る(=雌致死)16系統について、inverse PCRによる原因遺伝子の同定を進め、esg, emc, h, aop, CG10543などが候補として得られた。
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