研究概要 |
キイロショウジョウバエと、「雄殺し」という生殖操作をおこなう共生細菌スピロプラズマからなる共生系を材料とし、雄殺しのメカニズムの解明を最終目標とし、スピロプラズマのファージのもつ遺伝子や、子孫の性比に関係する宿主遺伝子などに関する研究を遂行した。 1.3系統のスピロプラズマ(Drosophila nebulosa由来の雄殺しスピロプラズマNSRO系統、NSRO系統の突然変異体で雄を殺さないNSRO-A系統、キイロショウジョウバエ由来の雄殺しスピロプラズマMSRO系統)のファージのゲノムを決定した。各ファージのゲノムサイズは約19-19.3kbであり、全体的な塩基配列の相同性は81%と高く、遺伝子の並びもよく保存されていた。推定された遺伝子の数は21-23であり、Spiroplasma citriにおいて宿主との相互作用に関わっているとされるp58, p12, p18, p54, p123が含まれていた。ファージ間の遺伝子の相同性を調べたところ、ORF8 (hypothetical protein gene)、ORF18 (hypothetical lipoprotein transmembrane gene)、ORF19 (p123)、ORF23 (新規)は、雄殺し系統と非雄殺し系統の間の相同性が低かった。 2. 定量的PCR法により、宿主昆虫の加齢に伴うスピロプラズマファージの動態が、スピロプラズマ系統によって異なることを明らかにした。また、スピロプラズマファージ上の9つの遺伝子について、定量的RT-PCR法による発現解析をおこなったところ、p58遺伝子の発現量は非雄殺し系統において有意に低いことが明らかになった。 3.雌の卵巣で強制的に発現させることで子孫の性比が雄に偏る(=雌致死が起こる)遺伝子として、esg, emc, h, aop, CG10543などが得られた。
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