研究課題
本研究では、1年目の水耕実験におけるイネの根から分泌された有機物は、水溶液中の微生物に分解される可能性があり、測定される分泌物量は、実際より少なかったという心配があった。そこで、最終年度には、根の分泌物量の測定精度を高めるため、培養液中に抗生物質を添加する実験を行なった。また、イネの根から分泌される有機態炭素量は、炭素の安定同位体法を用いた栽培実験を行なった。C3植物のイネを、長年サトウキビを栽培したC4土壌(δ13C=15‰)に植え、収穫後、植物態と土壌の炭素のδ13Cの値を測定し、土壌中における植物根由来の炭素の割合は、下記のマスバランス法を用いて計算した。δt=δp×fp+δo×(1-fp)ここで、fp:植物由来有機態炭素の割合;δt:栽培後の土壌のδ13C値;δo:栽培前の土壌のδ13C値;δp:植物のδ13C値。その結果、水耕栽培溶液に抗生物質を添加することによって、微生物の増殖を抑制すると同時に、イネの根の生育にも悪影響も与えた。抗生物質の添加によって、根からの分泌物量の測定精度を高めるのができないことがわかった。また、安定同位体法を用いた栽培実験では、有機物が少ない(炭素含有量が0.5%)C4土壌を用いたため、イネの根から微量の炭素が土壌に分泌されても、炭素の安定同位体比を測定することによって、正確に測定することができた。3年間の本研究では、水耕栽培と土耕栽培を行ない、イネの生育期間中に分泌される炭素量は、水耕溶液中の有機態炭素または土壌の炭素安定同位体の測定によって、測定することができた。
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Journal of Agricultural Meteorology
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Plant and Soil
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doi: 10.1007/s11104-012-1356-7