研究課題/領域番号 |
23580090
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 優 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60281101)
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キーワード | 植物 / ホウ素 / ストレス / 細胞壁 / シグナル伝達 / ペクチン |
研究概要 |
ホウ素は植物の必須元素である。ホウ素を植物の培地から除去すると直ちに種々のストレス応答が生じる。23年度までの研究で、水耕栽培シロイヌナズナをホウ素欠除培地に移すと、1時間以内に根の伸長領域に活性酸素分子種が蓄積し細胞死が発生することを示した。24年度はこの応答について更に解析を進めた結果、エチレン受容体のブロッカーである銀イオンの存在下では、ホウ素欠除に伴う活性酸素分子種の蓄積と細胞死が抑制されることを見出した。この結果は、ホウ素欠乏ストレスのシグナル伝達にエチレンが関与することを示唆する。 ホウ素は細胞壁でペクチンのラムノガラクツロナンII(RG-II)領域と特異的に結合し、B-RG-II二量体を形成している。このB-RG-II二量体の形成機構や細胞壁における安定性を解析する手段として、RG-II単量体とB-RG-II二量体を区別できる抗体の作成を試みている。24年度は、23年度にファージディスプレイライブラリから選抜したファージ抗体候補の評価を行ったが、B-RG-IIに対して高い特異性を示すクローンは得られなかった。一方、本研究で確立したB-RG-II固相化法を用いる競合ELISA分析により、23年度に新たに作成したウサギ抗血清はRG-II単量体よりもB-RG-II二量体に対してより高い親和性を示すことがわかった。このことは、このウサギ抗血清中にはB-RG-II二量体を特異的に認識するイムノグロブリン画分が存在することを示す。そこで現在、B-RG-IIを固定化したカラムを用いて血清を分画することにより、B-RG-II特異抗体を取得することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウ素欠乏応答機構を構成する分子の同定に関しては、エチレンの関与を明らかにすることができた。 B-RG-II二量体特異抗体の作成については当初計画したファージ抗体を取得することはできていないが、代替としてウサギ抗血清の分画によって取得できる可能性を見出し、研究を推進中である。抗体が取得できれば直ちに免疫組織化学的解析が実施できるよう、タバコ培養細胞を用いた実験系の構築も完了ずみである。
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今後の研究の推進方策 |
ファージディスプレイ法ではB-RG-II二量体に対し十分に特異性の高い抗体を取得することができず、B-RG-II二量体の形成機構・細胞壁内での安定性に関する免疫組織化学的解析の実施に至らなかった。このため現在代替法としてウサギ抗血清の分画によるB-RG-II二量体特異抗体の取得を試みており、25年度中には抗体の取得とそれを用いた解析が実施できる見込である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ファージディスプレイ法による抗体取得と解析に至らなかったため、これらの実験に充当する計画であった研究費は24年度中には使用しなかった。当該経費は、25年度にウサギ抗血清を用いた上記実験の遂行に使用する。
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