研究課題/領域番号 |
23580096
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和田 大 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00301416)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | コリネ型細菌 / オキサロ酢酸 / 代謝工学 |
研究概要 |
【目的】ピルビン酸キナーゼ(PYK)は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)からピルビン酸への変換を触媒する解糖系の鍵酵素である。これまでの研究で、PYK欠失株では過剰なPEPの蓄積を避けるためにアナプレロティック経路の酵素活性を変化させ、PEPからオキサロ酢酸生成方向へと代謝を傾かせることを報告した。一方で、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCx)は、ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸へのアナプレロティック反応を触媒している。そこで本研究では、PEPCxのアスパラギン酸によるフィードバック阻害の解除が、アミノ酸生産に与える影響を解析した。【方法】C. glutamicum ATCC 13032およびPYK欠失株に、PEPCxのフィードバック阻害を解除する変異を二重相同組換え法によって導入した。得られた株を、ビオチン量を制限したグルタミン酸発酵条件下で2Lジャーファーメンターを用いて培養し、その発酵特性について解析を行った。また、各株の細胞抽出液をアナプレロティック経路およびTCAサイクル関連酵素の活性測定に供した。【結果】PEPCx変異株およびPEPCx変異かつPYK欠失二重変異株において、それぞれ親株ATCC 13032よりも最大生育量の減少が見られた。しかし、糖消費速度(OD660当たり)に有意な差はみられなかった。一方でグルタミン酸およびアスパラギン酸濃度は、両株において有意な上昇が認められた。以上の表現型および酵素活性測定の結果から、PEPCxのアスパラギン酸によるフィードバック阻害の解除は、PYK欠失と同様に、PEPの代謝をオキサロ酢酸生成方向に傾かせることが示唆された。また、二重変異株では更なるグルタミン酸生産量の増大が観察されたことから、グルタミン酸生産においてはオキサロ酢酸の供給量が重要な因子であることが改めて示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では平成23年度はPEPCxのアスパラギン酸によるフィードバック阻害の解除が、アミノ酸生産に与える影響を解析する予定であったが、それは達成された。さらにPYK欠失との組み合わせの評価も行ったので、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
他の酵素の菌体内オキサロ酢酸濃度への寄与を調べるため、さらにCSの活性低下変異、MDH欠損変異の導入効果について検証する。本研究で導入予定の4種の変異の内容は以下の通りである。A. オキサロ酢酸合成を促進(=1.PYK欠損変異, 2.PEPC(fbr)変異) B. オキサロ酢酸分解を抑制 (=3. CS活性低下変異 4. MDH欠損変異)。 変異の導入は前年度と同様にShaeferらの二重相同組換え法を用いる。これらの変異をまず単独またはPYK欠損変異に導入し、アスパラギン酸生産量を指標にオキサロ酢酸濃度上昇への寄与を評価する。次にPYK欠損かつPEPC(fbr)の2重変異株にも導入し、3重変異株を構築する。また、必要であれば4重変異株も構築する。また、これらの過程でオキサロ酢酸濃度上昇に効果のある変異の組み合わせを見つけることができる。これらの情報から、C. glutamicumにおいてオキサロ酢酸濃度を制御している要因を特定できる。また、構築した各変異株について菌体内代謝産物の網羅的解析を行い、代謝変化を確認しつつ研究を進める。予想通りオキサロ酢酸濃度上昇が認められない場合は、ターゲット酵素を変更する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1. 平成23年度未使用額(50,552円)の発生理由。年度末に発注したため、納品は平成23年度内に行われたが、業者からの請求及び本学における経理処理が間に合わず、見かけ上、未使用となったものである。2. 平成23年度未使用額(50,552円)の平成24年度での使用予定。上記のようにすでに使用済みであり、平成24年度に使用する必要はない。本研究では必要な培養装置、分析装置には既存の物を活用できるので、設備備品に経費は計上していない。本年度も経費のうちの多くは通常の消耗品に使用される。
|