研究概要 |
【目的および背景】オキサロ酢酸 (OAA)はリジンやスレオニンなどアスパラギン酸 (Asp)系アミノ酸の前駆体であるため、OAAの円滑な供給はこれらの発酵生産において重要である。そこで本研究課題では、アミノ酸生産菌Corynebacterium glutamicumのOAA供給能強化に向けた代謝改変を目指している。細胞内においてOAAは様々な代謝経路への分岐点となっており、多数の酵素が生成と分解に関わるため、OAAをAsp系アミノ酸生合成に選択的に供給することは難しい。これまでの知見から、ピルビン酸キナーゼの欠失 (PYK-)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの脱感作 (PEPCfbr)、クエン酸シンターゼの活性低下 (CSL)の3種類の変異はAsp生成量を増加させることから、OAA供給量を強化することが示唆されている。そこで本研究課題では、グルタミン酸生産条件 (biotin制限条件)において、これら変異の組合せがOAAの供給に与える影響を検討した。 【方法と結果】野生株 C. glutamicum ATCC13032のゲノム上に3種類の変異 (PYK-, PEPCfbr, CSL)を単独または組合せて導入し、発酵培地でbiotinを制限して培養した。OAAの蓄積はAspの生成量を指標として評価した。その結果、3種類の変異を単独で導入した株は全て親株と比べAsp生成量が増加した。また、変異を2重、3重と組合せると、Asp生成量が更に向上した。したがって、これらの変異それぞれが、OAAのAsp系アミノ酸生合成経路への供給を強化する効果があり、また、これらの変異には相乗効果があることが示された。現在、ジャーファーメンターを用いた培養を行い、更に詳細な解析を行っている。
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