最終年度は事業廃止のため実施せず。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果 【目的】ピルビン酸キナーゼ(PYK)は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)からピルビン酸への変換を触媒する。これまでの研究でPYK欠失株では過剰なPEPの蓄積を避けるために、PEPからオキサロ酢酸生成方向へと代謝が傾くことを報告した。一方てで、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCx)は、ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸へのアナプレロテイック反応を触媒している。そこで本研究では、PEPCxのアスパラギン酸によるフィードバック阻害の解除がアミノ酸生産に与える影響を解析した。【方法】C. glutamicum ATCC13032およびPYK欠失株に、PEPCxのフィードバック阻害を解除する変異を導入した。得られた株を、ビオチン量を制限したグルタミン酸発酵条件下で培養し、その発酵特性について解析を行った。また、各株の細胞抽出液をアナプレロテイック経路およびTCAサイクル関連酵素の活性測定に供した。 【結果】PEPCx変異株およびPEPCx変異かつPYK欠失二重変異株において、親株よりも最大生育量の減少が見られた 。しかし、糖消費速度(OD660当たり)に有意な差はみられなかった。一方でグルタミン酸およひアスパラギン酸濃度は、両株において有意な上昇が認められた。以上の表現型および酵素活性測定の結果から、PEPCxのアスパラギン酸によるフィードバック阻害の解除は、PYK欠失と同様に、PEPの代謝をオキサロ酢酸生成方向に傾かせることが示唆された。また、二重変異株では更なるグルタミン酸生産量の増大が観察されたことから、グルタミン酸生産においてはオキサロ酢酸の供給量が重要な因子であることが改めて示唆された。
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