昨年度は輸送小胞の膜融合に関わるSNAREタンパク質のpre-autophagosomal structure (PAS)への局在を生化学的手法により解析した。その結果、ゴルジ体、エンドソーム、細胞膜で働くSNARE群がPASに局在すること、その内のいくつかはオートファゴソーム形成に必須なAtg9と物理的相互作用していることが示唆された。そこで、本年度は二分子蛍光相補性試験によってゴルジ体SNARE (Tlg1、Tlg2、Vti1)とAtg9の相互作用を解析した。二分子蛍光相補性試験はタンパク質―タンパク質相互作用解析法の一つで、蛍光タンパク質VenusのN末端領域とC末端領域をそれぞれ解析したいタンパク質に融合させ、それらを共発現させることにより、in vivoにおけるタンパク質相互作用、さらには細胞内における相互作用部位を解析できる。ゴルジ体SNARE (Tlg1、Tlg2、Vti1)とAtg9の相互作用解析にこの手法を適用した結果、いずれのSNAREもAtg9との結合性を示した。PASマーカーであるCFP-Ape1との共局在を解析した結果、ゴルジ体SNAREとAtg9はPAS上で複合体を形成していることが明らかとなった。これらの結果から、Atg9がSNAREをPASへリクルートしている可能性が考えられた。そこで、野生株とAtg9過剰発現株におけるゴルジ体SNAREのPASへの局在を蛍光顕微鏡で観察・比較したところ、Atg9を過剰発現することによりSNAREがPASに局在する割合が上昇した。このことから、Atg9はSNAREをPASへリクルートする働きがあることが示唆された。
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