研究課題/領域番号 |
23580101
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川井 泰 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00261496)
|
研究分担者 |
齋藤 忠夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00118358)
西村 順子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 技術専門職員 (10241556)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | バクテリオシン / 抗菌ペプチド / 環状構造 / 乳酸菌 / ガセリ菌 |
研究概要 |
1 環状化に関わる遺伝子(群)の特定: 環状バクテリオシン・ガセリシンA(全58アミノ酸残基)の生合成遺伝子(gaaBCADITE)を組込んだ発現プラスミドpGAA2を鋳型として、PCRにより各遺伝子または複数遺伝子を欠損させ、L.gasseri基準株に導入した結果、gaaC以外の全ての遺伝子がガセリシンAの生合成に関与していることを明らかにした。次いで、gaaC欠損株の培養上清から、HPLCを用いて本ガセリシンAを精製し、N末端配列分析と質量分析を行ったところ、D22の一カ所で切断された非環状ガセリシンAが得られた。本結果から、GaaCが環化後のガセリシンAを自身または他の推定プロティナーゼから保護している可能性が示唆された。2 環化形成タンパク質(酵素)の基質特異性試験: pGAA2を用いてガセリシンAのリーダー切断サイト近傍とN・C末端近傍のアミノ酸残基を適宜変更して発現させたところ、N-1およびI1残基の自由度が比較的高い一方で、環状化形成にはA58残基が重要であることを明らかにした。また、Y2、W3の側鎖である芳香族アミノ酸が生産と活性維持に重要であり、(推定)環化酵素反応ポケットに関与していることが考えられた。さらにリーダーペプチドのN末端からMetを除く14アミノ酸残基の欠損により、培養上精にガセリシンAの活性が消失したことから、ガセリシンAはこれまで報告されている他のリーダー配列が短い環状バクテリオシンとは異なり、リーダー配列は環状化ではなく生産性に重要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた生合成遺伝子の特定をはじめ、ガセリシンA抗体の作成と検出、環化形成過程におけるリーダー配列の役割推定、および環化形成タンパク質(酵素)のアミノ酸残基選択性を明らかにすることが出来た。また、リーダーペプチドの短縮(欠損)試験では、世界で初めてリーダー配列の役割の一端を解明することができた。 しかしながら、リーダーペプチド中の重要なアミノ酸残基・領域の特定には至らず、次年度の課題に組み込むこととした。
|
今後の研究の推進方策 |
1 環化形成酵素における触媒アミノ酸残基の特定: ガセリシンAの推定環化形成酵素は、GaaBCかGaaDI、もしくは両者複合型と考えられる。そこで、pGAA2を鋳型としてPCRにより、セリンまたはシステインプロティナーゼと推定される環化形成酵素(特にGaaB)の推定触媒アミノ酸残基(Asp・Glu、His、Ser、およびCys)を適宜変更して、L.gasseri基準株に導入後、環化形成能の消失から活性中心のアミノ酸残基を明らかにし、環化形成酵素を同定する。2 リーダーペプチドおよびガセリシンA付着認識タンパク質の同定: gaaBCDITEを単体または複数で無細胞系発現システムにより発現・精製した後、各種化学合成リーダーペプチドまたは精製環状ガセリシンAとの分子間相互作用解析を行う。また、前年度で生産が確認されたリーダーペプチドからさらにアミノ酸を欠損させ最小配列を確定した後、GaaTEなどの上記発現株を用いて、環状ガセリシンAの取得を試みる。本結果から環化形成酵素による1段階環化または多段階酵素反応(別酵素でリーダー切断後に環化形成酵素により環化)が確定し、ガセリシンA環状化生成機構の解明を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、引き続きアミノ酸改変試験・遺伝子配列解析を行うと共に、高価かつ未経験である無細胞系発現システムに取り組むことから、ペプチド合成費用を含めて消耗品費を昨年よりも多めに計上した。また、学会発表とセミナーを少なくとも4件(全て国内)を予定しており、学生を含めた旅費も計上した。さらに、成果として原著論文の投稿を2編予定している。
|