研究課題/領域番号 |
23580101
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川井 泰 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00261496)
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研究分担者 |
齋藤 忠夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00118358)
西村 順子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 技術専門職員 (10241556)
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キーワード | バクテリオシン / 抗菌ペプチド / 環状構造 / 乳酸菌 / ガセリ菌 |
研究概要 |
1 ガセリシンAの環状化に関わる遺伝子の特定: ガセリシンAの生合成遺伝子(gaaBCADITE)欠損株のうち、作出したGA自然耐性株1131GAr(pGAA2ΔgaaTE)の培養上清に抗菌活性が認められた。本株の培養上清から最終的にC8逆相クロマトグラフィーを用いて活性成分を精製し、質量分析に供して得たm/z値5,671は環化GAのm/z値5,651と比較して約20(水1分子)高値であった。本結果から、1131GAr(pGAA2ΔgaaTE)のガセリシンAはgaaBCADIから生産された非環状化構造であり、GaaTEが環化形成に関与する因子である可能性を原核生物で初めて見出すことが出来た。 2 ガセリシンAのプロセッシングに関わる遺伝子の特定: ガセリシンAのリーダー切断酵素と推定されるGaaB(全174アミノ酸残基)の分子内に各1残基のみ存在するCys97およびHis83のアミノ酸置換を行った改変株で、両培養上清に通常に抗菌活性が認められたことから、GaaBが少なくともシステインプロティナーゼおよびHis残基を触媒残基とするセリンプロティナーゼではないことが推定された。現在、残るセリンプロティナーゼの触媒残基(Ser, Asp, Glu)のアミノ酸置換を行っており、GaaBにおける前駆体ガセリシンAのリーダー切断ポケットの特定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガセリシンAの生合成・環状化は当初の予想と異なり、リーダーペプチドの切断(プロセッシング)と環化がそれぞれ別の遺伝子(群)により行われており、今回、GaaTEが環化形成に関与する因子である可能性を原核生物で初めて見出すことに成功した。また、予想が外れて生じたプロセッシングに関わる遺伝子特定(リーダーペプチド切断)試験は、当初に計画した通りの手法で切断酵素の絞り込みの有用な手段として活用できた。 しかしながら、リーダーペプチドの切断に関わる遺伝子と切断に関わる触媒アミノ酸残基(ポケット)の特定には至らず、また、前年度の課題であるリーダーペプチド中の重要なアミノ酸残基・領域の特定も遂行できなかった。また、予定していた無細胞系発現システムによる試験は着手できず、最終年度に必要な環化・非環化のガセリシンAの性状試験に使用する試料の調製準備も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1 ガセリシンAのプロセッシングに関わる酵素遺伝子の特定および触媒アミノ酸残基(ポケット)の特定: ガセリシンAの推定プロセッシング酵素は、GaaBCかGaaDI、もしくは両者複合型と考えられる。そこで、pGAA2を鋳型としてPCRにより、セリンプロティナーゼと推定される環化形成酵素(特にGaaB)の残る推定触媒アミノ酸残基(Ser, Asp, Glu)の変更およびドメインを適宜欠損して、L.gasseri基準株に導入後、正常な環状ガセリシンAの生産消失・減少から活性中心のアミノ酸残基を明らかにし、プロセッシングに関わる酵素を同定する。 2 無細胞系発現システムを用いた、ガセリシンAプロセッシング酵素の発現と切断試験: gaaBCDIをそれぞれ、または複数で無細胞系発現システムにより発現させた後、各種化学合成ガセリシンAリーダーペプチドを用いた切断試験を行い、in vitro でのガセリシンAプロセッシング酵素としての確証を得る。 3 環状および非環状ガセリシンAの調製・精製と各種性状試験: 環状および非環状ガセリシンAを調製、もしくは精製し、各種安定化試験(pH、熱、およびプロティナーゼ耐性)により、環状化の意義を追求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(最終年度)は、引き続きアミノ酸改変試験・遺伝子配列解析を行うと共に、環化・非環化のガセリシンAの調製と高価な無細胞系発現システムに取り組むことから、培地、精製用有機溶媒、およびペプチド合成費用を含めて消耗品費を昨年度予算よりも高めに計上した。また、学会発表とセミナーを少なくとも3件(全て国内)を予定しており、学生を含めた旅費、および研究機関の移動による担当学生の謝金も計上した。さらに、成果として昨年度に出せなかった原著論文の投稿を2編予定している。
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