研究概要 |
低濃度のガセリシンA(GA)に暴露して作出したガセリシンA自然耐性株L.gasseri 1131GArにpGAA2ΔgaaTEを導入したところ、培養上清に抗菌活性が認められた。そこでC8逆相クロマトグラフィーを用いて活性成分を精製し、質量分析に供したところ、m/zは5,671で、環化GAのm/z 5,651より約20(水1分子)高値であった。また、N末端アミノ酸配列解析では、5残基以降の9残基中7残基で成熟体ガセリシンAと同じ配列が得られた。本結果から、1131GAr(pGAA2ΔgaaTE)のガセリシンAはgaaBCADIから生産された非環状化構造であり、GaaTEが環化形成に関与する因子である可能性が示唆された。またガセリシンAは、GaaBCDのいずれかまたは複合体によりリーダーが切断された後、GaaTEにより環化形成が行われる2段階の生合成機構で分泌されるものと推定された。 ガセリシンAのリーダー切断酵素と推定されるGaaB(全174アミノ酸残基)の分子内に存在するアミノ酸残基(His83、Cys97、Ser99、Glu144、およびAsp147)を置換し、活性低減・消失(GA非生産)から触媒中心アミノ酸残基の特定を試みた。その結果、改変株全てに抗菌活性が認められたことから、GaaBが少なくともシステインプロティナーゼ、および多数の報告例を占めるHis、Ser、Glu、Aspを触媒残基とするセリンプロティナーゼではないことが推定された。本成果から、GaaBは新規のプロティナーゼである可能性が高く、前駆体ガセリシンAのリーダー切断に関わるポケット部位の特定が期待される。
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