研究課題/領域番号 |
23580104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 良一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50323481)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 酵母 / ホスファチジルコリン / ホスファチジルエタノールアミン / リモデリング |
研究概要 |
リン脂質のアシル鎖を繋ぎかえるリモデリングは、生体膜の恒常性の維持に重要な役割を果たすと考えられているが、その具体的なメカニズムや意義は未解明である。本研究では出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用い、主要リン脂質であるホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)のアシル鎖のリモデリングのメカニズムと意義を明らかにすることを目的として、以下の解析を行なった。1. PCのsn-1位へのアシル鎖の導入を解析するためのPCアナログを新たに合成した。アシルトランスフェラーゼあるいはアシルトランスフェラーゼと予想されるタンパク質をコードする遺伝子の破壊株の細胞抽出液を用い、本アナログを基質としてsn-1位へのアシル鎖の導入をin vitroで測定したところ、アシル鎖導入活性の低下した破壊株が見いだされた。本遺伝子がPCのsn-1位へのアシル鎖の導入に関わる可能性が示唆された。2. 温度変化に応答したリン脂質アシル鎖の変化培養温度を通常の温度から高温あるいは低温に変化させて培養した酵母野生型株の菌体から脂質を抽出し、PCおよびPEの分子種について質量分析装置を用いて解析した。その結果、培養温度が変化するとこれらリン脂質のアシル鎖の組成がすみやかに変わることが明らかとなった。さらに同様の実験をこれまで短鎖PCおよびPEのリモデリングに関わることが示唆されているALE1の破壊株で行なったところ、野生型株とは異なる組成になっていたことから、Ale1pがPCおよびPEの温度変化に応答したアシル鎖組成の変化に関わる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に合成したPCアナログを利用することにより、PCのsn-1位へのアシル鎖の導入に関わる可能性のある遺伝子を見いだすことができた。また高温および低温ストレス下でのアシル鎖組成の変化とそれに関わる酵素の解析についても成果が得られた。以上より、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) PCおよびPEのアシル鎖のリモデリングに関わる遺伝子の同定と機能の解析これまでに見いだしたPCのsn-1位へのアシル鎖導入活性を持つ可能性のある酵素については、その基質特異性等を解析する。また合成したPCアナログを用い、PCのsn-1位のアシル鎖の切断に関わる酵素を同定し解析する。さらにPEについても同様にアナログを合成し解析する。(2) PCおよびPEのリモデリングの制御機構の解析リモデリング関連酵素の基質特異性、様々な生体膜ストレス下での生産量、活性の変動を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の遂行に必要な一般試薬、酵素類、プラスチック器具、ガラス器具、標識化合物の購入のための物品費として100万円、研究成果発表および情報収集のための学会参加にかかる旅費として30万円、論文投稿にかかる費用として10万円を使用する。
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