研究課題/領域番号 |
23580105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野田 陽一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90282699)
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キーワード | ゴルジ体 / ER / 小胞輸送 / 局在 / 出芽酵母 |
研究概要 |
ゴルジ体槽成熟の過程において,膜蛋白質の厳密なゴルジ体局在は,その膜蛋白質が逆行輸送小胞に積み込まれるタイミングと密接に関わっている.複数回膜貫通型蛋白質のモデルとして我々が見いだしたSvp26を用いてそのC末の欠損株の解析を試みた.その機能の解析結果からカーゴとアダプター分子の結合をSvp26のC末が調節しているかも知れないという興味深い結果を得た.C末欠損Svp26の局在との関連,カーゴの局在やトラフィックに対する影響なども含めて現在その詳細を検討している.またカーゴのアダプター候補の複数遺伝子破壊株を作製し,その表現型を解析した.その結果8つの候補遺伝子を破壊した株は通常の生育温度でも生育速度が低下し,さらに37度で致死になることを見いだした.またその時マンノース転移酵素であるMnn1は間接蛍光抗体法でER に観察されるのに対して,分画実験ではERの分布を示さないという一見矛盾した結果を示すこともわかった.この多重遺伝子欠損株は生育の遅延も示すので,見られた種々の表現型が単に生育速度の低下によるものなのか,またどの現象が特異的なものなのかに関し,詳細を検討している.また今までに詳細な機能が不明であった,生育に必須でERに局在する膜貫通型蛋白質に関して,その温度感受性の変異遺伝子を取得した.ショ糖密度勾配遠心においてERマーカー蛋白質の挙動が興味深い変化を示し,ER-ゴルジ体間の物質の輸送や,ERの構成に関わる蛋白である可能性が示唆された.現在SNARE蛋白質など他の複数回膜貫通型蛋白質の挙動,局在に対する影響を調べている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数回膜貫通型蛋白質のC末の新たな機能に関して示唆を得たこと,Mnn1のアダプターの候補を絞り込むことに成功し,おそらく複数のアダプターがERからの搬出に関与することを示したことは,意味のある結果である.またその解析の過程で,新たに,ER-Golgi体間の輸送で機能することが予想されていたものの,その機能が不明であった膜貫通型蛋白質の機能解析の道筋をつけることができたのも大きな成果である.研究内容とは直接関係ないものの,今年も昨年に引き続き,東京理科大学からの外研生二人が研究室に参加してくれ,非常に優秀であったことも研究を進める強い要因となった.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた結果をさらに発展させると共に,25年度の計画を遂行する.カーゴとアダプターの離れるタイミングはそのカーゴのゴルジ体槽板間での詳細な局在やその逆行輸送と密接に関係していると考えられるので,その機構を,蛋白質修飾,オルガネラ内のpH,脂質との関連を含めて明らかにする.また成果の項目に記した機能未知遺伝子産物の変異によって起きるERの異常の原因,またSNARE蛋白質や複数回膜貫通型蛋白質の局在への影響を調べて,その細胞の生育に必須の機能を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体の作製のための抗原の取得を大腸菌の発現系でうまくいかず,予算の使用に遅れが生じた.Pichiaの系を導入し,酵母での発現を試みてり,精製した蛋白を抗原として,抗体を多数外注する予定である.
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