前年度までに作製したERからの搬出アダプターもしくは候補蛋白質をコードする遺伝子の多重破壊株の解析を継続して行った.作製した8重遺伝子破壊株は温度感受性の生育を示し,その責任遺伝子の一つが ERV14であることを見いだした.さらに他のグループからの報告とは異なり,erv14遺伝子破壊株ではGPIアンカー型蛋白質であるGas1の細胞内の局在に異常が生じていることを見いだした.Erv14はかなり多くの種類のカーゴを担当していることが報告されており,遺伝子の欠損は生育の遅延を起こすため, Gas1の局在変化が生育の遅延による全般的な輸送の低下に起因するのか,それとも特異的な表現型なのか現在検討している.Erv14とGas1の結合(共沈)は現在までに行った条件下では検出できていない.erv14遺伝子欠損の,他のGPIアンカー型蛋白質の局在への影響や,他の膜貫通型蛋白質の局在への影響を,間接蛍光抗体法およびショ糖密度勾配遠心による分画により調べている.また8つの遺伝子のうち,ERV14の他にその温度感受性の生育に欠損が大きく寄与する遺伝子として,機能未知の蛋白質をコードする遺伝子を同定した.その遺伝子にコードされる膜蛋白質は,ER-ゴルジ体間をリサイクルすることが報告されていたため,機能を詳細に調べるために,膜貫通領域の間の細胞質側を向くと考えられる親水性の領域のアミノ酸置換により,その局在の変化を調べた.その結果, ERからの搬出に関与すると予想される配列を親水性の領域の一つに見いだした.ERに蓄積するその変異体,もしくは,野生型の蛋白質にHA タグを付加した融合蛋白質を発現し,免疫沈降実験を行ったところ,それぞれに特異的に結合する蛋白質を一つずつ見いだした.質量分析計によりそれらを同定し現在それらの結合の意義の解析を進めている.
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