研究課題/領域番号 |
23580106
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高橋 祥司 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (90324011)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | D-アミノ酸オキシダーゼ / DAO / 好熱菌 / フラビン酵素 / 耐熱性酵素 |
研究概要 |
D-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)は,D-アミノ酸の検出・定量,アミノ酸ラセミ混合物の光学分割,医薬品原料の合成や神経・精神疾患の診断など広範囲な生物工学的応用が可能である。このことから,安定性の高いDAOが求められている。そこで本研究は,耐熱性を有する新奇なDAOを世界で初めて見いだし,その応用的利用へ展開するための基盤を築くことを目的とした。平成23年度は以下の実績をあげた。好熱性細菌Rubrobacter xylanophilus DSM9941に見いだしたDAOホモログ遺伝子(DAO遺伝子)をゲノムDNAからPCRにより単離し,大腸菌における発現系を構築した。大腸菌においてDAO遺伝子産物の大部分は封入体として発現したため,発現温度や発現誘導剤などの発現条件を最適化し,ジャーファーメンターを用いた大量生産系を開発した。DAO遺伝子を発現させた大腸菌粗抽出液は,D-バリンやD-イソロイシンなどの分岐鎖中性D-アミノ酸に対して高い活性を示したが,そのL体や酸性D-アミノ酸には活性を示さなかった。このことから,好熱菌R. xylanophilusのDAO遺伝子がDAOをコードしていることが明らかとなった。大腸菌粗抽出液からの本酵素の精製条件を検討し,電気泳動的に単一にまで本酵素を精製した。精製した本酵素の至適温度は65℃であり,60℃で1時間保温した後でも活性の減少は観察されなかった。既知のDAOで最も高い耐熱性を有する真菌由来のDAOは60℃,1時間の保温でほぼ失活することから,好熱菌由来のDAOは非常に高い耐熱性を有する新奇なDAOであることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,高い耐熱性を有する新奇なDAOを世界で初めて見いだし,その応用的利用へ展開するための基盤を築くことである。現在までに,我々は好熱性細菌R. xylanophilusにDAO遺伝子を見いだすとともに,本遺伝子が非常に高い耐熱性を有するDAOをコードすることを明らかにした。したがって,我々は世界で初めて高い耐熱性を有する新奇なDAOの取得に成功したといえる。今後,取得した耐熱性DAOの酵素学的諸特性などを明らかにし,本酵素の応用的利用の可能性を検討する必要がある。また,耐熱性DAOの多様な応用的利用への展開を図るため,種々の好熱菌からDAO遺伝子を単離する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の目的である耐熱性を有する新奇なDAOの単離に成功したことから,今後は精製した好熱性細菌R. xylanophilus由来の耐熱性DAOの基質特異性やVmax,Kmなどの速度論的パラメーターを決定し,応用的利用への適応性を明らかにする。また,DAO遺伝子が存在する可能性があるAmycolatopsis thermoflava IFO14333,Streptomyces thermogriseus NBRC100772,Saccharopolyspora thermophila NBRC16346などの他の好熱性細菌からdao遺伝子の単離を検討する。単離できたものから,順次大腸菌において発現させ,発現産物の耐熱性の評価と酵素学的諸特性の解析を行う。さらに,我々はデータベース検索により,好熱性真菌であるTalaromyces thermophilusに2種類のDAO遺伝子を見だしたので,これら DAO遺伝子の単離も検討し,真菌由来の耐熱性DAOの取得を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は,研究計画に記載した各種好熱菌からのDAO遺伝子単離を実施しなかったため,約30万円の研究費の未使用額が生じた。H24年度は,この未使用研究費を用いてH23年度に実施しなかった各種好熱菌からのDAO遺伝子単離を検討する。また,H24年度に計上された研究費はH24年度の研究計画に則して,微生物培養や酵素諸特性解析のための試薬や器具,酵素精製のためのカラム樹脂や試薬,DNAの塩基配列解析や組換え実験などの遺伝子工学試薬に使用する予定である。また,本研究で得られた成果を学会で発表するための旅費にも研究費を使用する予定である。
|