研究課題/領域番号 |
23580107
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山本 博規 信州大学, 繊維学部, 准教授 (20262701)
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キーワード | 表層タンパク質 / ターゲティング / 細胞分離酵素 / 細胞壁代謝 / 枯草菌 |
研究概要 |
細胞表層タンパク質の局在性における分泌シグナル(SP)の機能を明らかにするために、本年度は以下のような研究を進めた。 まずLytEのSP (SPe)を他の細胞壁溶解酵素のSPに置換したキメラタンパク質を発現させた場合、細胞表層における局在性やLytEの機能を相補できるかどうか検討した。用いたSPはLytF (SPf), LytC (SPc), LytD (SPd)の3種類である。また前年度までは、キメラ遺伝子をlytE locusに構築していたが、本来のLytEの局在性と機能性に比べて、若干変化していることが明らかになったため、Pspac-SPx-lytE-6xflagキメラ遺伝子をamyE locusに構築することとした。LytEの機能性の判定には、lytEおよびcwlOの二重欠損株が合成致死性を示す表現型を利用した。キメラタンパク質の機能性を評価した結果、SPfはSPe とほぼ同様に相補できたのに対し、SPdでは機能性が大幅に低下し、SPcは全く機能を相補しなかった。さらに、MreBHがLytEのC-末端活性ドメインと相互作用することにより、LytEの局在性や機能を制御していることが報告されている。そこでキメラタンパク質の機能性におけるMreBHの影響を評価するために、lytEおよびmreBHの二重欠損株にPxyl-cwlOを導入した株をバックグラウンドとして、SPf-LytEキメラタンパク質を発現させた。その結果、SPeに比べてSPfの機能性が大幅に低下することが明らかになった。今後は、SPの機能がより正確に評価できるmreBH欠損株をバックグラウンドとして、様々なSPを用いて発現させたLytEの局在性と機能との関連性について、より詳細な解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LytEに関する詳細な解析を進めた結果、そのC-末端DL-endopeptidaseドメインがMreBHと相互作用することにより、細胞側壁に誘導されることが明らかになった。この要因を排除するために、mreBHを欠損させた株を構築した。これにより、今後は個々のシグナルペプチドが有する局在部位調節における役割について解析することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、適切な研究の遂行を実施する。次年度は、LytEのSPを用いてLytFを発現させた場合に、局在性や機能面における変化を明らかにすることを試みる。これまで得られた知見に基づき、本来はlytEおよびcwlOの二重欠損株が示す合成致死性を相補できないLytFについて、そのシグナル配列やC-末端DL-endopeptidaseドメインを変化させることにより、LytEが有する機能を相補できるようなキメラタンパク質の構築を目指す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、サンプル保存用のフリーザーを購入する予定であったが、退職される先生からフリーザーを供与いただいたため、購入の必要性がなくなった。次年度は、ウエスタンブロットに使用する電気泳動槽が不足しているため、その購入費に充てるとともに、当初より予定していた消耗品費や旅費、論文投稿関連経費として使用する予定である。
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