本年度は、さらに詳細にLytEおよびLytFのシグナルペプチド(SPeおよびSPf)の機能を調べるために、両SPの前半及び後半部分を入れ替えたキメラSP(SPefおよびSPfe)-LytFや、SPの3つの領域(+チャージ、疎水性、SPase認識部位)を入れ替えたキメラSP(SPeff、SPfefおよびSPffe)-LytFを作成した。これらのキメラSPを用いて発現させたLytFが、本来のLytEが担っている細胞側壁の限定分解活性をどの程度相補できるのか調べた。まず、それぞれのキメラSPを用いて発現させたLytFの分泌量を調べた結果、いずれのキメラSPを用いた場合でも、コントロールであるSPe-LytFの場合とほぼ同じ量のLytFが細胞表層および培地中に分泌されていた。次に機能面での影響を調べるために、lytE欠損株においてcwlOを枯渇させた状態で、それぞれのキメラSPを用いて発現させたLytFが合成致死性をどの程度相補できるか調査した。その結果、前後を入れ替えたSPでは、SPefの方はSPeとほぼ同様の相補性を示したのに対し、SPfeの方は機能が低下していた。このことはSPeの前半部分が機能面において重要であることを示唆していた。さらに3つの領域を入れ替えたSPにより発現させた場合、+チャージ領域のみを入れ替えたSPeffでは、ほとんど機能しないことがわかった。これに対して、SPase認識部位を入れ替えたSPffeでは、顕著な機能の低下が見られたものの相補可能であることがわかった。さらに疎水性領域を入れ替えたSPfefでは、SPeとほぼ同様の機能性を示した。以上の結果から判断すると、SPeの疎水性領域の前半部分が側壁の限定分解を行う上で非常に重要である可能性が示唆された。
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