研究概要 |
2,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、これまでに存在が示唆されながらも活性を示す微生物株が分離されていなかった。集積培養を行い、培養液を希釈するなどの技法を用いることで、本酵素活性を持つ細菌株を分離することに成功した。一般的な集積培養では振とう培養を行うが、水酸化反応が優先するため、静置培養して脱炭酸活性を持つ微生物の生育を配慮する必要があり、これまで活性菌の分離が困難である原因が判明した。 酵素誘導物質を検討した結果、2位および4位の水酸基が共に活性誘導に重要であることが判明した。活性を高めた菌体を用いた反応で、基質特異性などの反応特性を明らかにした。また、逆反応による炭酸固定機能を評価したところ、レゾルシノールへの位置選択的なカルボキシル基導入が可能で、副生成物を生じないことを示した。培養菌体から単一の精製酵素標品を調製し、これまでに報告のあるヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素と分子特性を比較した。熱安定性が極めて高く、精製過程で処理が効果的であった。精製酵素のサブユニット分子質量は25 kDaでホモダイマー構想をとり、既知の類縁酵素の中で最も小さく、一次構造上での相違があると考えられる。N末端アミノ酸配列は既知脱炭酸酵素との相同性は認められず、腸内細菌科の機能未知タンパク質と末端10残基が一致した。 これらの結果から、本研究で見いだした2,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、炭酸固定機能を備えた新しい構造特性を持つ酵素であり、タンパク質分子が最も小さいため、炭酸固定機能を発揮する酵素構造特性の解明に適すると考えられる。今後、酵素遺伝子のクローニングを進め、酵素高次構造解明などを検討する。
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