研究課題/領域番号 |
23580110
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
金原 和秀 静岡大学, 工学部, 教授 (30225122)
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研究分担者 |
岡野 泰則 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90204007)
野尻 秀昭 東京大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90272468)
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キーワード | バイオフィルム / 流れ場 / 毒性物質分解 / シミュレーション |
研究概要 |
本研究は、芳香族化合物の分解過程でバイオフィルムが形成することに着目し、マイクロアレイによる発現解析を行うと共に、マイクロデバイスを用いて流れ場での形成をシミュレーションし、その形成メカニズムを解明することを目的として行った。 1.マイクロデバイスによる形成促進の定量化 異なる栄養条件下におけるビフェニル分解菌Comamonas testosteroni TK102株のバイオフィルム形成を、多流路マイクロデバイス用いて観察した。形成したバイオフィルムを共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で観察し、COMSTATソフトウェアで定量化した。その結果、ビフェニル分解菌TK102株において、栄養濃度の高い条件でバイオフィルム形成の促進が認められた。 2.マイクロアレイ解析に有用なマイクロデバイスの改良 これまで開発したマイクロデバイスの流路幅を大きくして、得られるバイオマス量を多くする改良を施した。この改良により、RNAの抽出量がマイクロアレイ解析に十分な量になることを目指した。その結果、十分なタンパク量と細菌由来の多糖類が得られることを確認した。 3.タイリングアレイによる形成促進機構の解析 当初目的としていたビフェニル非分解菌KT2440株のタイリングアレイは使用できないことが判明した。そこで、TK102株のゲノムシーケンスを依頼した。現在シーケンス結果の解析を行っている。 4.バイオフィルム形成のモデル化 フェーズフィールド法を用いて、デバイス中の流れ場でのバイオフィルム形成のシミュレーションモデルを構築した。23年度の解析式にモノーの式による細菌増殖項を加え計算を行った結果、レイノルズ数が増加するにつれて基質成分の対流速度が大きくなり、基質取り込みに伴う増殖によるバイオフィルム総量とバイオフィルムの厚みがともに大きくなる傾向になることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオフィルム形成促進の定量化は、多流路マイクロデバイスを用いた実験で再現性を持つ結果を得ることができた。タイリングアレイによる形成促進機構の解析は、KT2440株のタイリングアレイが使用できないという結果が出たため、アレイ解析を行うには至っていない。しかし、流路幅を大きくした改良型マイクロデバイスで形成させたバイオフィルムから、RNAの抽出が可能となる結果が得られた。また、ビフェニル分解菌TK102株のゲノムシーケンスが得られたことから、そのデータを解析中であり、マイクロアレイではなく、ターゲットとする遺伝子を特定して、その遺伝子発現の変動を指標とした解析を計画中である。バイオフィルム形成のモデル化は、フェーズフィールド法の改良を行い、バイオフィルム形成のシミュレーションに成功した。以上のように、計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、多流路マイクロデバイスを用いて、バイオフィルム形成の観察とバイオマスの定量化が可能となったことから、中間代謝産物によるバイオフィルム形成促進の定量を行う。また、作製した改良デバイスを用いて、デバイスに形成したバイオフィルムからRNAを抽出し、遺伝子発現解析の準備を行う。TK102株のゲノム解析が終了したことから、タイリングアレイの作製を試みたいが、予算的に難しいことから、ゲノム解析結果からターゲットとする遺伝子を特定し、次世代シーケンサを用いたトランスクリプトーム解析で遺伝子発現の解析を試みる。また、デバイスでの解析とシミュレーション解析をリンクさせ、実験条件をシミュレーション条件に反映させる実験を計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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