研究課題/領域番号 |
23580111
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
邊見 久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60302189)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アーキア / メバロン酸経路 / イソプレノイド / 酵素 / 代謝 / フラビン酵素 |
研究概要 |
アーキアにおけるイソプレノイド生合成の初期段階であるメバロン酸経路は、他生物で見出された古典的な同経路とは一部異なることが示唆されているが、ほとんど解明が進んでいない。我々は、将来の代謝工学的な利用を見据え、同経路に関して主に酵素学的な解析を行い、種々の知見を得た。特に、同経路の最終段階を触媒する酵素であるタイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼについて、反応機構依存性の阻害剤を用いた結晶構造解析を進め、補酵素である還元型フラビンモノヌクレオチド(FMN)と同阻害剤の共有結合構造を明らかにした。この構造から、同酵素において還元型FMNが酸化還元的な役割を持たず、一般酸塩基触媒およびカルボカチオン中間体の安定化という特殊な触媒機能を有することを示し、フラビン酵素研究にインパクトを与えた。また、同酵素が基質非存在下で8量体構造をとることを結晶構造解析により示した。同構造は基質存在下における4量体構造が一部変化することで形成されており、この構造変化は基質結合部位の崩壊を伴っていた。基質の添加により8量体から4量体への構造変化が引き起こされることが、X線小角散乱や動的光散乱といった手法により示された。この現象は、基質による酵素の活性化を意味していると思われる。また、メバロン酸からイソペンテニル二リン酸までの変換を触媒する酵素群を複数のアーキアより単離し、特性評価を行った。その結果、少なくともSulfolobus属アーキアには古典的メバロン酸経路が存在することが示された。但し、同経路の酵素の一部は過去に報告例のない興味深い性質を有しており、詳細な解析を進めている。また、ゲノム情報より古典的メバロン酸経路の一部を欠くと予想されていたアーキアからメバロン酸の代謝に関わることが予想される新奇酵素を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は大きく分けて2つあるが、第1の目的であるタイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼの酵素学的な研究については既に原著論文2報分相当の進展が得られた。特に反応機構に関する研究成果は米国科学アカデミー紀要に掲載され、フラビン酵素研究に大きなインパクトを与えることができた。また、その研究の副産物である多量体構造に関する研究は、当初次年度の実施を目指していたが、これに関しても早めに成果を出すことができ、最近執筆した論文が米国微生物学会発行の学術雑誌にアクセプトされている。第2の目的であるアーキアのメバロン酸経路における未知部分の解明については、順調に酵素の異種発現系を構築できたため、こちらに関しても次年度の実施計画の一部まで達成することができた。また、メバロン酸の代謝に関わることが予想される新奇酵素を見出しており、これもきわめて順調な成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には実施計画に則って研究を進めるが、予想以上に研究が進展したタイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼについては、新たにNMRを利用した反応機構解析を実施しようと考えている。その準備段階として、変異導入による同酵素の単量体化を試みる。これは同酵素の多量体構造がNMR解析には大きすぎるという問題点をクリアするための実験であり、NMR解析により還元型FMNの電子状態を直接的に観察するためには避けて通れない。メバロン酸経路の他の酵素群に関しては、それぞれの詳細な特性評価を進めると同時に、結晶構造解析に着手したい。特に新奇酵素や、過去に報告例の無い性質を示す酵素について、まずは結晶化条件の検討から始める。酵素の立体構造はそれらの機能の理解につながることが期待され、将来の同酵素群の応用を考えても、得ておくべき情報である。また、アーキアの遺伝子破壊実験についても次年度中に着手しておきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展が予想以上に順調であったため、特に使用期限の短い試薬類の購入量を全体的に減らすことができ、その結果として次年度への研究費繰越が生じた。この繰越分も含め、次年度の研究費の大半は試薬や研究機材、キット類などの物品(消耗品)費としての使用を予定している。特に放射性標識試薬については非常に高価なメバロン酸経路中間体を使用する必要があり、かなりの部分をその購入に充てる。また、次年度には国際学会を含め複数の学会、研究会への参加と成果報告を予定しており、本研究費から旅費や学会参加費を支出したい。また、論文投稿料や論文執筆の際の英文校閲料などの諸経費も必要である。
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