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2012 年度 実施状況報告書

代謝工学利用を目指したアーキア由来新奇メバロン酸経路の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580111
研究機関名古屋大学

研究代表者

邊見 久  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60302189)

キーワードアーキア / イソプレノイド / メバロン酸経路
研究概要

アーキアのメバロン酸経路において最終段階の異性化反応を触媒するタイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼについて酵素学的な解析を実施した。好熱性アーキア由来の同酵素は、基質の非存在下では8量体を形成し、基質の添加により4量体に解離することが示されている。8量体形成には基質結合に重要なアミノ酸が使われており、したがって8量体のままでは酵素は活性を持たない。したがって同酵素における、多量体形成を伴った活性制御機構の存在が予想された。その証明のため、8量体を形成できず、常に4量体で存在する変異型酵素を作製した。さらに、4量体形成部位に変異を導入することで、単量体で安定に存在する変異型酵素の作出にも成功した。今後これらの酵素を用いることで、同酵素の活性制御に関する知見を得ようと考えている。また、同酵素の、還元型フラビンを補酵素とした特殊な反応機構については、計算化学による解明を進めている。
大半のアーキアにおけるメバロン酸経路は、古典的経路とは一部反応が異なると考えられているが、情報が不足しており実体は未解明である。しかし一部の好熱性アーキアのゲノム中には、真核生物などで解明が行われた古典的メバロン酸経路の全酵素のホモログがコードされている。これらのホモログ遺伝子を単離し、組換え酵素を用いて酵素活性を検証した。さらに、放射標識基質を用いたトレーサー実験により、アーキアの細胞破砕液中に存在するメバロン酸経路の酵素活性を検出した。その結果、アーキアにおいてはきわめて例外的な、古典的メバロン酸経路の存在を証明することができた。さらに、他種のアーキアから、アーキアに特有と考えられている新奇メバロン酸経路に関わる新奇酵素の探索を進め、複数の候補を得ることができた。現在詳細な酵素学的解析を進め、同経路への関与を証明しようと試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼに関しては、当初計画よりも大幅に研究が進展し、予定外の成果をあげることもできた。その一方でアーキアの新奇メバロン酸経路に関する研究は予定したほどには進んでいない。その理由として、第一に酵素の活性測定に用いる基質の調製に手間取ったことが挙げられる。過去の報告通りの調製方法が上手くいかず、現在原因を究明中である。NMRなどの解析には大量の基質調製が必須であり、早めにこの問題をクリアしたい。第二に、アーキアの遺伝子破壊が難航していることが挙げられる。これは本技術がそもそも未成熟なためであり、次年度中の成功に期待したい。一方で、メバロン酸経路関連酵素の結晶構造解析が進行しているなど計画外の成果が得られており、研究全体としては順調な進展度合いと言えるだろう。

今後の研究の推進方策

タイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼに関しては、これまでに作製した変異型酵素、および新たに作製する変異型酵素を利用して、多量体構造と酵素活性の関連を明らかにする。また、計算化学による同酵素の反応機構解析も継続して進めて行きたい。
新奇メバロン酸経路については、これまでに単離した関連酵素候補が触媒する反応を、生成物のMS、NMR解析により明らかにしたい。それらの生成物が同経路の中間体であるか否かは、トレーサー実験により確認するつもりである。また、遺伝子破壊実験については、必要に応じて共同研究も視野に入れつつ、継続して研究を進めたい。未知反応の解明により、最終的に同経路の全体像を明らかにするのが目標である。さらに、一部酵素については結晶構造解析が進行中であるので、構造学的なデータをもとにした研究も行って行きたい。

次年度の研究費の使用計画

予算の大半は試薬や研究機材、キットの購入に充てる予定である。特に放射標識試薬は高価だが、トレーサー実験において必須なため、かなりの部分がその購入に費やされるはずである。また、結晶構造解析に関する設備を充実させることを考えている。その他の予算は主に学会発表のための旅費、論文の投稿料、論文執筆時の英文校閲料などに使用される。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Biochemical evidence supporting the presence of the classical mevalonate pathway in the thermoacidophilic archaeon Sulfolobus solfataricus.2013

    • 著者名/発表者名
      Nishimura, H. et al.
    • 雑誌名

      Journal of Biochemistry

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1093/jb/mvt006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Substrate-induced change in the quaternary structure of type 2 isopentenyl diphosphate isomerase from Sulfolobus shibatae.2012

    • 著者名/発表者名
      Nakatani, H. et al.
    • 雑誌名

      Journal of Bacteriology

      巻: 194 ページ: 3216-3224

    • DOI

      10.1128/JB.00068-12

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Archaeal phospholipid biosynthetic pathway reconstructed in Escherichia coli.2012

    • 著者名/発表者名
      Yokoi, T. et al.
    • 雑誌名

      Archaea

      巻: 2012 ページ: ID 438931

    • DOI

      10.1155/2012/438931

    • 査読あり
  • [学会発表] タイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼにおけるフラビン補酵素の触媒機能2013

    • 著者名/発表者名
      邊見 久
    • 学会等名
      2013年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      東北大学(仙台市)
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] 代謝経路再構築によるアーキア膜脂質の大腸菌細胞における生産2012

    • 著者名/発表者名
      磯部圭祐
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(博多市)
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] 生合成マシナリーへのアーキア酵素組み込みによる非天然イソプレノイド化合物の創出2012

    • 著者名/発表者名
      邊見 久
    • 学会等名
      新学術領域「生合成マシナリー」第4回公開シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学(東京都)
    • 年月日
      20121207-20121208
  • [学会発表] mechanism-based inhibitorを用いたタイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼの反応機構解析2012

    • 著者名/発表者名
      邊見 久
    • 学会等名
      2012年度酵素・補酵素研究会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
    • 年月日
      20120727-20120728
  • [学会発表] Sulfolobus solfataricusにおけるメバロン酸経路の酵素学的研究2012

    • 著者名/発表者名
      生明靖裕
    • 学会等名
      日本Archaea研究会第25回講演会
    • 発表場所
      関西学院大学(西宮市)
    • 年月日
      20120720-20120721
  • [学会発表] Archaeal phospholipid biosynthesis pathway reconstructed in E. coli2012

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Hemmi
    • 学会等名
      The International Conference of Natural Product Biosynthesis
    • 発表場所
      Awaji, Hyogo, Japan
    • 年月日
      20120617-20120622
    • 招待講演
  • [学会発表] Chain length determination mechanism of geranylfarnesyl diphosphate synthase from methanogenic archaeon Methanosarcina mazei2012

    • 著者名/発表者名
      Takuya Ogawa
    • 学会等名
      The International Conference of Natural Product Biosynthesis
    • 発表場所
      Awaji, Hyogo, Japan
    • 年月日
      20120617-20120622
  • [学会発表] Substrate-induced change in the quaternary structure of type 2 isopentenyl diphosphate isomerase from Sulfolobus shibatae

    • 著者名/発表者名
      邊見 久
    • 学会等名
      新学術領域「生合成マシナリー」第4回若手シンポジウム
    • 発表場所
      静岡県立大学(静岡市)
  • [学会発表] 基質により誘導される好熱性アーキア由来タイプ2イソペンテニル二リン酸イソメラーゼの四次構造変化

    • 著者名/発表者名
      中谷仁美
    • 学会等名
      第22回ドリコールおよびイソプレノイド研究会例会
    • 発表場所
      新潟大学(新潟市)
  • [図書] Handbook of Flavoproteins: Volume 1ーOxidases, Dehydrogenases and Related Systems2012

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Hemmi et al.
    • 総ページ数
      358
    • 出版者
      de Gruyter

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公開日: 2014-07-24  

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